Baby lover(Ryuta↓all)

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毎日予備校があるわけでもないけど、俺は毎日、千香と放課後に会ってデートする。 俺が毎日一緒にいたいだけ。 土日は会えないから淋しい。 「進学?」 「したくないけど。予備校サボってる」 「…もしかして私と一緒にいる時間、本当は予備校?」 聞かれて俺は頷く。 今頃、予備校では講師がホワイトボードに数式でも書いていて、生徒はかりかり必死に勉強しているだろう。 …うんざり。 何が楽しくて勉強なんかしなければいけないのか。 「予備校行きなよ」 千香は俺の気も知らずに言ってくれる。 「勉強ばかりさせられたくないって。夏になったら考える。千香は?毎日遊んでいていいのか?」 俺は俺の話から逸らすように千香のことを聞いてみる。 「…どこ行ってたの?って聞かれるだけ」 それならよかった。 怒られてるなら無理には誘えないし。 千香の親が甘くてよかった。 俺は千香にジュースを買って奢って、自転車はおいて川の土手を散歩。 街灯も少なくて土手は暗い。 千香の顔もよく見えない。 見えないからいつもより緊張もしないで話せる。 千香は何を考えているのか土手をおりていこうとして、俺は少し慌てて追いかける。 「千香、ちょっと待った。おまえ、よくそんな歩けるな。見えないって」 俺はうっすら見える千香のどんどん進む背中に声をかける。 見えない足元。 滑って転ぶのはかっこ悪くて嫌だ。 千香を見失うのも嫌だ。 千香は笑って、俺のそばに戻ってきてくれた。 はいって感じに軽く手を差し出してくる。 たまにこういうところが男前。 そういうのも好き。 ただかわいいだけじゃない。 知るたびに近くなっていく。 「……手、繋ぐの恥ずかしい」 俺はそう断った。 千香に手を貸すではなくて、手を貸されるのは男として情けない。 「女装しているだけの男友達とでも思えば?どうせよく見えないでしょ?」 千香は俺のブレザーの袖を握って引っ張って歩く。 手は握らなくても、結局手を貸されてしまっている。 よくは見えないけど…。 その影は華奢な女。 ただ遠くから見るより、並んで歩くようになって気がついたことがある。 「千香、けっこう背ある?160以上?」 「162。ヒール履いたら隆太より高くなるかな?」 なる。 俺の身長、170。
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