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「…いちゃいちゃ禁止」
そんな禁止を出してみた。
「それってつきあってるの？」
素直にはいじゃなかった。
妄想と現実がわからなくなってくる。
「……だから俺もつきあうの初めてだってっ」
「つきあわなくてもよかったんじゃない？」
それは言われたくない。
俺は千香とつきあえて本気でうれしいから。
もう別れるって言われそう。
つきあって１日目なのに。
俺、情けなさ過ぎ。
「…千香は俺の。そう言える関係になりたいって思っただけ」
「…隆太は私の」
俺の真似をするように千香は言ってくれて、俺は吸った煙が気管に入ってげほげほ咳き込む。
妄想よりも現実の千香のほうが危険だ。
妄想通りに動きやがる。
妄想以上に冷静で、俺を掻き乱す。
俺をドキドキさせまくる。
俺、千香に激弱だ。
千香を自転車の後ろに乗せていると、千香は俺の背中に擦り寄ってくる。
俺の鼓動は千香に聞こえるんじゃないかってくらいで。
背中がばっきばきに緊張しまくる。
襲われる。
絶対襲われる。
「千香っ、だから、…あんまりくっつくなってっ」
振り返ることもできずに言ってやると、千香の腕は俺の体をぎゅっと抱きしめてきた。
俺は思わずブレーキかけて。
千香は構わず、俺の背中に抱きついて離れない。
心臓壊れそう。
他の誰に抱きつかれても何も思わないのに、千香に抱きつかれたら声も出ない。
俺の胸にふれる千香の指先にふれた。
その指先で俺の心臓、鷲掴みされてる感じ。
なぁ、千香。
どうしよう？
ちょっとは余裕持たないとやばくね？
おまえに押されてばっかりでいいかな？
その手に俺の鼓動聞こえない？
のぼせてぶっ倒れそう。
妄想の中の千香が言う。
「私も嫉妬したんだよ。私も隆太に抱きついていたいの」
これ、本当に妄想かな？
なんか…千香の気持ちがわかってるような気がするんだけど。
「ねぇ、隆太。いっぱい甘えたい」
甘えて。
俺、頼りないかもしれないけど。
千香に惚れた気持ちだけは本物だから。
全部受け止めるから。
甘えて。
…って、赤くなってかっこ悪いから顔は見ちゃダメ。
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