Baby lover(Ryuta↓all)

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教室の中を見ると、ぽつんと自分の席で俯せている千香を発見。 「千香」 声をかけても顔を上げない。 返事もしない。 拗ねすぎ。 俺は千香に近づいて、その頭にふれて優しく撫でてやる。 千香は俺がふれると喜ぶ。 …なんというか、かわいすぎる彼女。 「……帰ろう?」 「もっと優しくして」 「ごめん…」 どういうのが優しさかわからない…とは言えない。 ふれるのは俺の場合、ある意味、下心。 「学校でももっと一緒にいたい」 千香は顔を上げてくれたと思ったら、そんなことを言う。 それが今の問題なのはよくわかってはいるけれど。 「…それは却下」 「なんでっ?」 「冷やかされるっ」 ただそれだけだっ。 他にやましいものはないっ。 千香はまた拗ねそうだ。 ご機嫌とりたい。 「…手、繋いでいく?」 聞いてみると、千香は拗ねながらも席から立ち上がった。 少しずつ俺は千香の扱い方を覚えてきたかと思われる。 左手に小さな手。 ぎゅっと手を握られて、応えるように素知らぬ顔で握り返す。 千香はそれだけで機嫌をなおしてくれる。 かわいい彼女。 顔もかわいいけど。 つきあえばつきあうほど、もっとかわいく思える。 俺、千香以上に誰かに惚れることなんてないように思う。 冷やかされるのは嫌だけど。 千香の望みを叶えてやろうと学校で千香に声をかけようとしては、なんでそのタイミングで?というような間の悪さで声をかけられる。 今度こそと席から立ち上がろうとした俺は奈緒美に突進かまされた。 もう連れなんていらないと思う。 彼女がいれば十分だと思う。 「離れろっ。おまえが絡んでくるから彼女に変な誤解されてるんだよっ」 「早く別れたらいいじゃない。隆太はあたしのだ」 奈緒美は俺の頭をぎゅっと抱いて、俺の顔は奈緒美の胸に。 逆セクだ。 「なんか柔らかい」 「さわっていいよ?」 「遠慮」 俺は奈緒美を振り払う。 「手を出しやがれっ!」 「彼女になら出してやらぁっ。おまえは彼女じゃねぇ」 「だから早く別れやがれっ!」 「絶対別れてやるかっ」 こんな言い合いを毎度のようにしているのに。 俺の彼女は肝心なことだけは聞いていない。 しかもまた山瀬に声をかけられていやがる。 美男美女。 その絵面も見たくないというのに。
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