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すがる思いを抱けるのは晃佑しかいなかったから。
他に誰に助けてと思えばいいのか。
…助かりたいのか。
ここから私という存在が消えることが一番の助けになるような気がしている。
男が電話を切ると、トモは男に手を振り上げて叩いた。
その頬を思いきり。
大きな音がしたのに、部屋の中には他にも男がいるのに。
イカれている。
狂っている。
笑って眺めて煽るだけで止めようともしない。
「コウがきたらここにいる全員、警察に突き出されるよっ?なに考えてんのっ?馬鹿じゃないっ?」
トモは声を荒くして男に怒鳴った。
「いってぇな。おまえも犯されたいのか?」
叩かれた男はトモを鋭く睨み、トモは逃げるように自分の荷物をまとめて。
机の上にあった粉に目を留めると、それを手に私のところにきた。
「口開けな。仲間にいれてあげるから。あんたはクスリで狂ってパーティーにノリノリだった。あんたが何を言っても幻覚」
トモは私の顎を掴む。
頭を振って逃れようとしても、その手の力は容赦のない本気。
顎が潰されそうなくらいの痛み。
「おとなしく口を開けろっ!ほらっ、飲んでっ」
粉を飲めなんて無理だと思う。
私の顔にはその粉末がかかる。
無理矢理こじ開けるように口を開けられて、抵抗するようにトモの指を噛んだら叩かれた。
「おとなしくしろっ!コウがくる前に帰らなきゃ、コウに殴られるのっ!絶交されるっ!」
トモは泣きそうな顔を見せて、私の口に粉を押しつけてくる。
私は私の顔を掴むトモの手から逃れるように頭を振りまくって、トモは私の上に押さえつけるように跨がって。
私はまたトモの指を噛んだ。
「自業自得の自分の浅はかさを私に押しつけないで!私を脅したって、これだけの人数使っておいて、絶対に一生誰にもバレないで過ごせるはずがないでしょ?これが犯罪だとわかっていてやったのはあなたでしょ?」
言い返すように声をあげると、私は拳で殴られた。
何度も何度も。
私が手を使って抵抗できないのをわかっていて。
泣きながら殴ってくる。
振り上げられる拳がこわくて目を閉じて、歯を食い縛って、私はその拳を受けるしかない。
トモは私の鼻を摘まんで、私の口の中に紙ごと粉を入れて。
私は激しく咳き込む。
殺される。
そう思った。
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