Baby lover(Ryuta↓all)

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フラれたくない。 フラれにいくのかもしれない。 なんてことばかり考えながら、夕暮れになりつつある道をとぼとぼ歩いて。 会えないほうがヤバいと思って急いで。 公園の中に千香の姿を見つけて、自転車を置くと駆け寄る。 ブランコに立ち乗りした千香の前までいくと、俺は用意した言葉を口にして頭を下げた。 「ごめんっ。もうしないからっ」 「…してもいいよ?」 千香は拗ねるでもなく、そんな言葉を返してくれて、更に焦る。 俺はぶんぶん頭を横に振る。 しないっ、しないっ、しないっ。 しろと言われてもしないっ。 「千香にされたくないからしないっ」 これだけは譲ってやらないと言い切った。 「私は隆太だけのもの」 千香はそんな言葉を返して、ブランコを漕ごうとして、俺はそれを止めるようにブランコの鎖にふれる。 簡単に許そうとするのが逆に不安になる。 もういらないと言われている気分になる。 拗ねて怒って嫉妬されたい。 ブランコに乗った千香は俺より目線も上になっている。 俺はまっすぐに千香を見上げる。 千香は目を逸らす。 すれ違ってる気持ちを感じる。 重なりたい。 ちゃんと言わないと。 「…許さなくていい」 「……別れたいって意味?」 「違う。殴っていい。別れたくない」 「殴る理由なんてないよ?」 「……嫉妬して。俺を束縛して。俺はおまえのものだと言って」 俺がそんな願いを口にしてみると、千香はブランコの鎖から手を離して俺に抱きついてきた。 俺は千香を抱き止めて、その願いは俺が千香に甘えてると思わされる。 甘えさせたいのに、うまく甘えさせられない。 俺が甘えてばかりで情けない。 「……ごめん。千香。俺は……千香のもの」 もう一度謝って、言い直すように言った。 俺がここにいたい。 千香の彼氏でいたい。 千香が俺のものでいてくれるなら、俺も千香のものでいる。 千香の腕は俺にしがみつくように強く俺を抱いて引き寄せて。 そこまで千香との身長差もなくて、千香のほうが今は上に見上げる態勢で。 俺は口を塞がれて呼吸を止められそうになって、顎を上げて少し必死になる。 これは…く、苦しい…。 ドキドキどころじゃない。
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