Breath

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俺のまわりに女がいるわけじゃなくて、コウのまわりに女がいる。 奈緒美は俺に抱きついてくることもなくなった。 俺としては友達として仲良くしていたつもりだし、こんなことで連れが減るのもうれしくないなと思う。 泣かせるしかなかったのかと考えてみると、自己嫌悪して嫌になる。 奈緒美も同じクラスにいるし、奈緒美に少し遠慮して千香に声をかけないでいたら、俺はまた別の女に絡まれる。 俺にべたべたしてくる手を払っても、頬をつねってみても、女は奈緒美の位置を手に入れたかのように、奈緒美と同じように俺に絡む。 「だから俺、彼女いるっつぅのっ」 「若林でしょ?なんにも言ってこないんだし、いいんじゃない?奈緒美が隆太を独り占めしていやがったから、ずっとこうしたかったんだ」 女は彼女のように俺の体にべたべたしまくる。 千香は問題外で奈緒美が俺の彼女だったかのように言いやがる。 引き離しても引き離しても、奈緒美以上にしつこい。 「本気、殴っていい?」 「いや。隆太狙ってる女多いんだもん」 「俺、彼女いるって言ってんだろっ。狙うなっ」 俺は女が痛がるのをわかっていて、強く腕を掴んで引き離す。 「いたっ。ちょっと…っ」 「懲りろよ。もっと痛くするぞ?」 「……奈緒美がやっといなくなったのに」 「だから奈緒美とつきあってねぇよっ」 「奈緒美のほうがウザかった。彼女気取りしまくりで。形だけの彼女よりも彼女だったよ」 「誰が形だけの彼女だよっ」 「言わなくてもわかってるくせに。隆太、つきあおうよ。ねぇ?」 何をどうすれば俺はこんな女ばかりにモテるのか。 無視をしまくることにした。 構うからだということにして。 今度はいきなり唇狙われた。 顔面に手を当てて押しのけたけど、ヤバかった。 モテるにしても形がある。 俺のモテ方はちょっと違う。 押しつけまくられて、拒否しても無視してもしつこい。 理由はなんとなくわかっている。 コウの幼なじみで、コウが一番仲良くしているように見られて、もう新しい彼女のいるコウに見せつけたいだけ。 コウが元カノというものに友達に戻ろうと言われても、まったくかまってやらなくなるのもある。 俺に惚れてるわけでもないくせにと俺が拗ねそうだ。
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