Breath

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俺がコウに連れていかれたのは空き教室。 そこには女が数人いた。 どれも奈緒美が離れてから俺に絡んでくるようになったコウの元カノで、睨みあいのケンカをしていたやつらだ。 「お待たせ。掴み合いのケンカでもしてると思ったけど、仲いいんじゃね?おまえら。 で、俺と別れたから?隆太に迷惑かけてどうすんだよ?こいつになんの関係があんの?」 コウは俺をそこにおいて話し始める。 昨日の今日で奈緒美が図ってくれたらしい。 コウが動いてる。 ただし、俺を連れてきて一人で標的になるつもりもない。 一人でやれよと思う。 女たちは口々に違うというような声をあげる。 「違わない。おまえらが意味不明な取り合いして隆太が迷惑してんのはわかってんだろ。隆太にその気があるんだったら言わない。隆太はおまえら全員、興味ないから。わかったら逆セクじみたことはやめろ」 何か俺が虐めから庇われているようにも見える。 …まぁいい。 何かが変わるならなんでもいい。 今のままじゃ、千香に俺が声をかけたら、千香が更に何か悪く言われそうでもあったし。 そもそもこいつらが奈緒美のように俺に泣くとはとても思えない。 俺はモテているわけじゃない。 コウの後始末の悪さに巻き込まれている。 友達になんてなれないとはっきり言わないから。 元カノに冷たいから。 俺は口を出すことなく黙って見ていた。 見ていたら、いつもより更に氷のように冷たい尖ったものをコウが突き刺すから、泣き出す女もいる。 コウは容赦ない。 嫌われてもまったくかまわないと思っているから、更に容赦ない。 別れた女に未練がましくないのは男らしい。 ただ、そんなに元カノいたら、未練なんてどこにも残ることないつきあいしかないだろとも思う。 それでも…、コウの元カノ。 俺は手を出したくない。 コウの未練は見たくない。 「よし。任務完了」 予鈴が鳴って女たちを教室に追い払うように戻らせると、コウはすっきりしたという顔を見せて言う。 「…なんの任務?つか、奈緒美も元カノだろ?あいつの言いなりに動くんだ?」 「俺が元カノ全部憎いと思ってるとでも?」 「よくわからん。おまえの元カノ多すぎて。さっきのはストレス発散、八つ当たりにも見えた」
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