Breath

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「千香。降りてこい」 俺はもう一度、少し真剣に言ってやった。 千香はちらっと俺を振り返って、俺の真剣さが少しは伝わったのか降りてきてくれた。 誰にも見せてやらない。 俺のもの。 手の届くところまで千香が降りてくると、俺は千香の体に腕を回して抱き上げて地面に降ろした。 思ったより軽かった。 地面に降ろしても離してやらないで、後ろからぎゅうっとその体を抱きしめる。 千香は俺の腕の中でおとなしくて。 俺はまた少しドキドキしながら、目を閉じて千香の頭に唇を当てる。 千香がなんにも言わないのは拗ねたとき。 千香が拗ねたら俺からふれると機嫌をなおしてくれる。 俺にふれられたいなんて、千香もすけべ。 でもそんな千香が俺にはかわいい。 俺は千香の耳元に唇を寄せて、その耳にキスをするように囁くように声をかける。 「ごめんな、千香。…学校でも話そう?…いっぱい…いちゃつこう?」 他に俺ができることってなにがある? いちゃつくのは…おまえのためじゃなくて、俺の下心。 いっぱいおまえにふれて、いっぱいおまえにキスしたい。 …あれ?なんか笑ってくれなくなってる? …重なってない。 何がいけないっ? 俺なりに日々は千香の研究。 何をすれば喜び、何をすれば笑うのか。 何をすれば怒り、何をすれば拗ねるのか。 何をすれば惚れてくれて、何をすれば好きと言ってくれるのか。 かわいい俺の彼女はなかなか難しい。 攻略は一筋縄ではいきそうにない。 昨日、学校で話そうと言って、またしても実行できなかった俺がいる。 まずは俺のここをどうにかするべきかもしれない。 反省しつつ、連れの遊びの誘いをいつものように断って、まっすぐに公園にいった。 千香はまだきていなかった。 俺が教室を出るとき、めずらしく残っていたからまだ学校かもしれない。 一服して待ってみた。 俺が待つのは初めてかもしれない。 いつも俺が連れに捕まっているから。 もうそろそろかなと何度も時計を見て、でもこなくて。 空が暗くなると心配にもなって。 携帯番号、また聞いていないと思い出す。 呆れられそう。 呆れられたのかも。 昨日、笑ってくれなかった。 …会いたい。 抱きしめたい。 いちゃつきたい。 放課後に会えないと淋しい。 同じ学校、同じクラスなのに話さないから。 …ごめん、千香。 今更わかったことを呆れないで。
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