Breath

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顔を上げて千香を見ると、千香は俺を見ていた。 「…隆太が法学部受かったら…えっち、しようか?」 …突拍子もないことを言わないで欲しい。 思考、ちょっと止まった。 ただ話の流れからして、千香が俺に大学受験をさせようとしているのはわかる。 法学部もピンキリあるけど、予備校いかないとそこは目指せそうにない。 つまり予備校いけと言ってる。 俺の下心を褒美にするとは…。 その前にキスもしてないのに、セックスなんて…。 いや、いつかはしたいけど。 まずはキスじゃね? 「……受かるまでおあずけ?って、おまえ、それ言うだけだろ」 俺はそこに行き当たって言ってやる。 「受かるまでおあずけ。…どうせ隆太、手も繋がないししないでしょ」 いや、する。 そこを無防備にするな。 俺だって男だ。 千香のかわいい体にあんなことやそんなこと…。 なんて言い方はさすがにできない。 「…俺がむっつりだってわかってるくせに」 「したいの?なら、予備校行かなきゃ。小学校や中学のときみたいに、また落ちて適当なところ入って遊ぶだけになるんでしょ」 千香は俺をわかりきったように挑発してきやがる。 そのつもりだったとは言えない。 その予備校いって受かったら千香とセックスなんて餌があるから、余計に釣られたくもないって思うのに。 俺をがったがたに崩すのがどうしてこんなに得意なんだ? 少しはかっこつけさせろっ。 「俺が予備校行ったら会えなくなるだろ。それでいいのかよ?」 「学校、同じで同じクラス。毎日会ってる。隆太が予備校行かない理由にされたくない」 「学校じゃあんまり話せない」 「電話番号教えてもらったから、いつでも話すくらいできるよ?」 千香は俺に携帯を見せる。 俺の言い訳をことごとく潰してくれて、俺は言葉をなくす。 千香のほうが上手だ。 俺に弱味があるから悪い。 予備校のこと、本当はわかってる。 なに甘えてんだよって言われるのもわかってる。 俺は千香から顔を逸らして煙草に火をつける。 「煙草、ブレザーににおい残ってるから、脱ぐか家で消臭スプレーしたほうがいいよ?」 言われて俺はブレザーを脱いで、千香は俺のブレザーを持つ。 溜め息をつくように煙を吐く。 またかっこ悪いところ見せてる。 予備校の話なんてしなければよかった。
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