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「……予備校、別に毎日あるわけじゃない…けど、……千香がなんで俺に親の決めた道を歩けって言うんだよ?俺は俺の好きなことをして生きたい」
「好きなことをするのはまちがってないと思うよ。大学くらい親の希望叶えてあげたら?って思っただけ。今まで裏切ってきたんでしょ?」
「……俺は俺で、誰かの操り人形になりたくない。
世界は小さな狭い鳥籠のように思う。俺は鳥籠に閉じ込められて、その小さな世界で暴れているだけなのかもしれない」
親の手の中。
親の思い通りに動きたくないと反抗してるだけに過ぎない小さな俺。
そんなの千香に見せたくないのに千香は俺をがったがたに崩す。
言い訳を受け止めてもらえず、本音語らせてかっこつけさせてくれない。
「…その扉は開いていないの?」
「開いていない。何をやっても親の操り人形のまま」
好きなようにしているつもりで、釈迦の手のひらの上の猿だ。
「開ければいいじゃない。私には隆太が好きでそこにいるように見えるよ。その扉に鍵はかけられているの?絶対に逃げられないの?隆太が逃げようとしていないだけでしょ?どんなに嫌がっても、隆太は家に帰る。鳥籠の中の更に小さな鳥籠の中へ自分から帰っている」
まだ自立できないから。
それは言い訳だ。
俺は親に飼われて生きている。
親に育てられて今がある。
鳥籠は俺を閉じ込めているわけじゃない。
わかってる。
でも狭い。
やりたいことやりたい。
勉強なんてしていたくない。
予備校にいかなくても親は何も言わないけど。
立てられた目標があるだけで狭い。
そこに従うと操り人形。
人形になりたくないと暴れてもまだ籠の中。
…俺は親に養われているから。
開けられた扉の向こう側に飛んでいかないのは…、俺だ。
親に甘えてるのは俺だ。
千香は俺の隣で俺のブレザーに顔を擦り寄せる。
このかわいい俺の彼女は俺より大人だ。
俺が甘えてる。
「……千香の鳥籠に入りたいかも」
俺がそんな言葉をこぼすと、千香は俺を見る。
俺は千香の頬にふれて、その唇にキスをしようとした。
千香は俺の唇に指先を当ててキスを止める。
「ファーストキスが煙草の味なんていや」
「…キスしたことない?」
「ないよ。甘いキスしてみたい」
甘い…キス?
それってどんなのっ?
ディープっ?
それ甘いのっ?
俺は何をどうすればいいのか迷って焦ってリードしきれない。
歯磨きしてからキス?
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