Breath

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俺のまわりは経験者どもで溢れているし、ご教授願ってもいいけど。 エロいビデオ観て研究してみても甘いのがなんなのかわからない。 千香も難しい注文くれる。 …というか遮断された空間に二人きり。 まわりからは見えない。 微妙にドキドキ。 思えばこんなふうに千香と二人きりになったことがない。 いつも外でデートするばかりで部屋に上がり込んだことがない。 部屋に連れ込んだこともない。 隣にはかわいい彼女。 俺の下心が暴走しそう。 甘いキスはわからないしできないけど。 思いきりチャンスだとは思う。 今度はもう少し雰囲気つくってから、キスしようとしてみるべきか。 なんて俺が考えているなんて千香は思ってもいないのか。 何かを探すように鞄をごそごそやってる。 「なんか探してる?」 「飴」 「言ってくれれば出すのに。ガムもある」 俺はどこに入れていたかなと制服のポケットというポケットから、飴やガムを取り出す。 鞄にもまだ入れていた。 鞄のポケットからも出して、好きなの食えと千香の手に乗せていく。 高校生。 煙草を吸える場所も限られているし、口が寂しくなるから常にこういうものを常備している。 千香が飴を眺めるのを横目に見ながら、携帯灰皿に灰を落とす。 甘いのはどう考えても雰囲気だ。 甘い雰囲気にどうやったらもっていけるのか、まったくもってわからない。 いきなり、ちゅっと唇奪ってしまったほうが早い。 「煙草、まだ?」 「新しいの吸う?」 俺は短くなった煙草を携帯灰皿で消して、煙草の箱を手にする。 千香は煙草を欲しがることなく、飴を包装から出したと思うと、俺の唇に当ててきた。 食えということらしい。 俺は唇に押し当てられる飴を唇で挟むように受け取り、千香の指が少し中に押し込む。 その千香の俺の唇を見る顔を見ながら、俺は舌を軽く千香の指にふれさせて指を食べるように唇で挟む。 俺だけ甘い気持ちで千香を見ているような気がする。 千香の指を舐めまくってキスしまくって。 その唇も見えてる肌全部にキスしまくって。 隠されてる肌にも唇滑らせて。 千香を食べたい。 なんてことは言えない。 俺に下心があることわかってるくせに、無防備な彼女。 いつまでも奥手で逃してばかりでいると思うなよ? 俺の唇はおまえにふれたがってるんだから。
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