Breath

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「何味?」 聞かれて、口の中の小さな丸い飴玉を転がしてみる。 「いちご…と、千香の指の味」 「じゃあ、いちご味のキス?私も煙草吸ったし、何か飴食べようかな」 千香は何か平然と言って、俺が渡した飴を選ぶ。 今の言い方は…、あれ?してってこと? 「…こんなところでキス?」 「だめ?」 キスするつもりないとも言わずに、口に飴を入れてる。 …わからない。 甘いキスって甘いにおいならいいのか? やっぱりやめたとならないうちに、これを逃すことがないように。 千香に逃げられないようにその肩を押して壁に押しつけて、その唇に唇を当てた。 ずっと欲しかったもの。 目を閉じて、唇に感じる千香の唇の柔らかさに満たされていく。 鼻先に香るのは俺の口の中のいちごの飴の甘いにおい。 いちご味のファーストキスかもしれない。 あんまりちゅうっとしまくるのもなぁと唇を離しながら目を開けると、驚いたように俺を見ている千香の顔。 「…味、わかんなかった」 何か残念そうに言われて、俺は少し照れて笑う。 俺にはいちご味の千香の唇だったのに。 俺のファーストキス。 千香のファーストキス。 もう一回。 今度はセカンドキス。 俺はもう一度千香の唇に唇をふれさせて、千香の唇を感じる。 俺の中は甘いものでいっぱいで、ドキドキして。 それが気持ちいい。 さっきよりも長く千香の唇の柔らかさを唇に感じる。 千香の手は俺の服を少し掴んで、その唇が苦しげに呼吸を溢す。 俺も呼吸を止めた唇から小さく息をこぼして、もっと千香を感じたくて、唇をゆっくりと擦りつける。 柔らかい唇が気持ちいい。 千香の頭に手を当てて髪に指を絡めて撫でてかわいがって、千香が嫌がりもしないで俺に身を任せるから、どんどん暴走。 千香の唇の味をみるようにその唇を舐めて、口の中で転がった飴玉を千香の口の中に押し込む。 まだ嫌がって逃げたりしないから、千香の唇の間に舌を小さく入れる。 千香の舌が俺の舌にふれた。 その柔らかさが気持ちよくて、千香の舌を舐めようとしたら、飴が邪魔してくれる。 一度舌を引っ込めて、千香の唇を食べるように唇で挟んで。 千香は俺の唇の間に舌を入れてきて、俺の口の中に飴玉を入れてくる。 目を閉じて舌と唇だけの感覚。 気持ちよさに小さな吐息と声をこぼして。 夢中でキス。
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