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まいたつもりだったのに甘かった。 「発見。待ち合わせ場所ってここ?こんな今時、小学生もこないようなとこだったんだ?」 女は言いながら、俺のそばに当たり前のように寄ってくる。 くるな。あっちいけ。 こんなところを千香に見られたら、また誤解される。 「帰れよ。遊ばないって言っただろっ?」 「せっかく見つけたのに帰るわけない。ここかぁ。つまんないとこで待ち合わせするんだね」 つまらなくて悪かったな。 俺にとっては誰も入れたくない聖地だ。 すべての千香との思い出がここにある気がする。 そこに入り込まれるのはうれしくない。 また違う思い出を入れられたくない。 ここで千香を待ちたい俺は移動しようとするより、女を追い払おうとして。 女は簡単に追い払われてもくれず、俺に絡もうとしてきて振り払う。 「俺の隣に当たり前のように座るなっ」 「別にいいじゃん。若林のかわりでいいからいちゃつこうよ」 「ふざけんな。かわりなんているか」 相手は千香だから意味があって、他のやつといちゃついても意味もない。 俺を飼うのは千香だけでいい。 餌をくれるのは千香だけでいい。 俺はひたすらはねつける。 女はひたすら俺に絡んでくる。 無視を決め込むのも難しい。 嫌なことを嫌と言っても、真剣に語り合わないとわかってくれない女が俺のまわりには多すぎる。 また別の人の気配を感じて顔をそっちに向けると、学校にはこなかったのに私服の千香がいた。 「千香っ」 俺はその顔を見れただけでもうれしくて笑顔になる。 女もしつこいし、立ち上がって千香の手を掴んで、さっさと移動。 千香の私服は初めて見るかもしれない。 もっとじっくり見たいし、どうして学校を休んだのか聞いてやりたいけど、今はとにかく移動。 あの閉鎖された地下に続く階段くらいでいいかもしれない。 あそこなら人にそうそう見つからない。 千香とゆっくり話せる。 「隆太っ、逃げんなっ」 女は俺を追ってきて、俺の歩みを止めるように立ちはだかる。 「だったら俺を追うな。俺は千香とつきあってる。おまえにかまってる余裕なんかない」 はっきりくっきり俺は言ってやってるつもりだ。 なのに聞き分けのない女ばかり俺のまわりにいる。
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