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理由は奈緒美が俺に教えてくれてる。 俺の反応わかっていて、それを楽しんでかまってくれることに喜ぶ。 真剣に語り合ったり殴ればわかると言われても、そうすると女は泣く。 …泣かせたくないと俺が思うそれが甘い。 わかっていても泣かれたら慰めてしまいそうで、やっぱり意味がない。 「ごめん。…殴っていいよ?」 俺が女をかわしきれないでいると、千香は俺の隣からそんな言葉を挟んだ。 俺は千香を見る。 千香はまっすぐに女を見て本気だ。 なんで千香が殴られないといけないのか。 そんな修羅場は俺がごめんだ。 「なに?その余裕っ。隆太とつきあえているからっていい気にならないでよっ」 女は千香に言い返す。 「あなたはどうすれば納得するの?隆太の気持ちもないのにつきあいたい?隆太の気持ちが欲しいなら、喧嘩していても意味ないんじゃない?」 千香も言い返してどんどん修羅場。 「はぁ?死ねば?」 女は千香を煽るように馬鹿にしたように言って、千香は手を振り上げ、女は逃げる。 千香は叩くことなく手をおろす。 どっちを止めたらいいのかわからない。 千香に突っかからないでもういこうと言うべきか。 女に真剣に言い聞かせるべきか。 迷った俺が悪かった。 「帰って」 千香が強気に言うと、女は手にしていた鞄で千香を殴った。 けっこうな音を響かせた。 強く殴られたのだろう。 俺の手は声をあげるよりも前に、崩れ落ちるように地面に膝をついていく千香の頭を胸に抱き寄せていた。 指先に感じた血液に、確かあったはずとハンドタオルをポケットに探る。 見つけたハンドタオルを千香のその殴られた頬に当てる。 焦って声も出ない。 何を考えればいいのかも、まったくわからなかった。 ただ千香を傷つけた女が憎い。 俺は女を睨んで、女は俺の視線に一歩後退り。 「か、か弱い女のふりなんてすんなっ!殴れってそっちが先に言ったんじゃんっ!」 女は言い訳のように声をあげた。 確かにそうだ。 そこは千香が悪い。 それを言わせることになった女を振り払いきれなかった俺がもっと悪い。 手を出したやつが一番悪い。 「……何があっても俺がおまえに惚れることはない。謝る気持ちもないなら帰れ」 「なんであたしが謝らなきゃいけないわけっ?」 わかってるはずなのに女はまだ俺に甘える。
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