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何をしても俺なら許すと思ってる。
口だけだろと思ってる。
俺は千香をそこにおいて立ち上がると女に向き合って、女の頬を平手で殴った。
初めて女を本気で殴ったかもしれない。
女は頬に手を当てて俺を見る。
そんな信じていたのにって顔で見るな。
千香を殴ったおまえを許すことはできない。
「もう一発いっていい?」
声もあげずにただ俺を泣きそうに見ていた女に聞いてやると、女はそのまま逃げるように背中を向けて走っていった。
俺の手が痛い。
こんなことになった自分を恨む。
俺が泣きそうだ。
なんにもかっこつかない。
俺は座り込んでる千香を見て、千香の腕を掴んで立たせて、とりあえずベンチに座らせる。
千香の頬は赤くなっていて、女の鞄の何かでひっかけたような傷もある。
千香が握って持ってくれていたハンドタオルを受け取って、公園の中の水道で濡らして。
千香の隣に座ってその頬に当てる。
冷やして、もう血も止まった傷を軽く拭って、また冷やす。
千香はじっと俺を見ていた。
怒って怒鳴り散らすでもなく、か弱く泣きまくるでもなく。
痛かっただろうに。
なんかどこか男前。
情けない俺。
「…ごめん、千香」
その目も見れないまま、やっとその言葉を出せた。
「隆太って女友達つくらないほうがいいみたいだね。言葉ははっきり断っていても、優しいから女が勘違いしちゃう」
千香はそんな言葉を返してくれる。
怒ってくれていいのに。
千香の言ってることはもういやってくらいによくわかった。
千香が巻き込まれる修羅場なんて二度と見たくもない。
反省。
「……もうつくらない。やめとく。痛い?ここ、ちょっと切れてる」
「大丈夫。手を当ててくれたから癒されちゃったみたい」
千香は俺に笑ってみせてくれて、俺は泣きたいくらいにまた千香に落ちる。
千香の傷が早く癒えるようにと、その頬に唇を当てる。
千香は俺を見て、その目がどこか甘えていて。
俺は千香の唇に唇を当てる。
千香は俺の唇を受け止めて目を閉じる。
ごめん。
情けないけど。
かっこつかないけど。
千香を好きな気持ち、止められない。
大好き。
俺のかわいい人。
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