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「…あっ…、…んっ、いや…」
いやとか言いながら、俺の頭を引き寄せるのはなしだろう。
もっとしてとしか聞こえない。
俺の暴走、そんなのじゃ止まらない。
「千香が誘ってるっ。なんでおまえ、そうなのっ?他の男の前でそんなふうに甘えるの禁止な?冗談で男をからかうのも禁止っ。……千香」
俺は千香を怒るように言いながら、もうここでこのまま襲ってやろうとした。
「好き。隆太の独占欲」
初めて聞けた好きの言葉。
俺の独占欲が好きって意味になるけど、俺が好きって意味に捉えてやる。
その首筋、服を軽くはだけさせるように唇を下へ滑らせていく。
「……でも、もう…私の遊びにつきあってくれなくて…いいよ?」
千香は続けてそう言った。
遊び…?
俺は襲おうとしたものもどこかに飛んだ。
その一言に何を聞いたのか理解できなくて、理解しようと考えて吹き飛んだ。
遊び?
つきあう遊び?
ただそれだけの関係?
つきあってくれなくていいって…、俺、フラれたってこと?
理解できてるかもしれない。
でもわからない。
納得なんてできない。
俺がフラれる理由なんていくらでもあるかもしれない。
でもそんなのでフラれてやりたくない。
遊びなら遊びでもいい。
その遊びにもっと俺につきあわせてくれたらいい。
だって俺は惚れてる。
遊びだから嫌だなんて絶対に言わない。
たとえ千香の気持ちが俺になくても。
俺は千香のもの。
「…俺は遊びじゃない。おまえが遊びだとしても、俺は本気。……別れてやらない」
俺は千香の首筋に顔を埋めて、痛くなる胸を感じながら言った。
もういらないって言われてるのはわかってる。
フラれてるのはわかってる。
でも納得できない。
納得しようなんてできるはずがない。
そんなの理由にならない。
そんな理由で別れるなんて俺にはできない。
「…もうここにこないよ?」
「俺はくるよ。千香が俺に会ってやってもいいと思うなら来てくれたらいい。…俺の彼女はおまえだけ」
俺はおまえのもの。
それを忘れないで。
強く引き留める言葉は持てなかった。
俺がフラれる理由はありすぎるから。
それはよくわかってるから。
違う理由を千香が出していたら、俺は待ったりしなかった。
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