Break

11/22
前へ
/606ページ
次へ
「…あっ…、…んっ、いや…」 いやとか言いながら、俺の頭を引き寄せるのはなしだろう。 もっとしてとしか聞こえない。 俺の暴走、そんなのじゃ止まらない。 「千香が誘ってるっ。なんでおまえ、そうなのっ?他の男の前でそんなふうに甘えるの禁止な?冗談で男をからかうのも禁止っ。……千香」 俺は千香を怒るように言いながら、もうここでこのまま襲ってやろうとした。 「好き。隆太の独占欲」 初めて聞けた好きの言葉。 俺の独占欲が好きって意味になるけど、俺が好きって意味に捉えてやる。 その首筋、服を軽くはだけさせるように唇を下へ滑らせていく。 「……でも、もう…私の遊びにつきあってくれなくて…いいよ?」 千香は続けてそう言った。 遊び…? 俺は襲おうとしたものもどこかに飛んだ。 その一言に何を聞いたのか理解できなくて、理解しようと考えて吹き飛んだ。 遊び? つきあう遊び? ただそれだけの関係? つきあってくれなくていいって…、俺、フラれたってこと? 理解できてるかもしれない。 でもわからない。 納得なんてできない。 俺がフラれる理由なんていくらでもあるかもしれない。 でもそんなのでフラれてやりたくない。 遊びなら遊びでもいい。 その遊びにもっと俺につきあわせてくれたらいい。 だって俺は惚れてる。 遊びだから嫌だなんて絶対に言わない。 たとえ千香の気持ちが俺になくても。 俺は千香のもの。 「…俺は遊びじゃない。おまえが遊びだとしても、俺は本気。……別れてやらない」 俺は千香の首筋に顔を埋めて、痛くなる胸を感じながら言った。 もういらないって言われてるのはわかってる。 フラれてるのはわかってる。 でも納得できない。 納得しようなんてできるはずがない。 そんなの理由にならない。 そんな理由で別れるなんて俺にはできない。 「…もうここにこないよ?」 「俺はくるよ。千香が俺に会ってやってもいいと思うなら来てくれたらいい。…俺の彼女はおまえだけ」 俺はおまえのもの。 それを忘れないで。 強く引き留める言葉は持てなかった。 俺がフラれる理由はありすぎるから。 それはよくわかってるから。 違う理由を千香が出していたら、俺は待ったりしなかった。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加