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たった1ヶ月のつきあい。
だけど俺にとっては何よりも忙しくて楽しかった1ヶ月。
フラれたのはわかっていても、予備校のない日は本当にその千香と待ち合わせた公園にいった。
千香がこないのをわかっていて、そこでぼんやりと緑の葉を繁らせる桜の木を見ていた。
妄想の中の千香は言う。
「馬鹿。いかないって言ったじゃない。早く帰りなよ」
いいんだよ。
予備校はいってる。
毎日勉強していたくもない。
他にすることもない。
「友達に遊びに誘われるくせに」
そうだな。
でも俺、これでも傷心だし、いきたくない。
千香はここにこなくても、学校にいけば同じクラスだし、姿は毎日見れる。
妄想の中のおまえと話すのをまだやめられそうにない。
「私は振ったんだよ。傷をつけたのは私だよ」
もうつきあってくれなくていいなんて言うから悪いんだろ?
もっと言葉選んで、もっと俺を傷つけるように言えるだろ?
それは俺のためみたいに聞こえる。
そんなのは俺のためじゃない。
俺はおまえと一緒にいたい。
おまえがいけって言うから予備校にいってるけど、おまえが予備校がある日に俺を必要としてくれるなら、予備校なんていかなくていい。
俺の一番は千香なんだよ。
すべての優先順位は千香が一番なんだ。
「知ってるよ。わかってる。だから嫌なの。だから甘えたくないの」
甘えんぼ。
俺に甘えやがれ。
俺が受け止める。
俺が惚れてること忘れんな。
勝手に俺の度量決めつけてんじゃねぇ。
俺が嫌だっていうまで甘えまくれ。
話はそれからだろ。
…なぁ、千香。
たった1ヶ月のつきあいかもしれないけど、知らないこともまだまだあるし、おまえのすべてがわかってるわけでもないけど。
俺にだってわかってることあるんだよ。
おまえが素直じゃないこと。
おまえが甘えんぼなこと。
おまえが男前にかっこつけたがること。
おまえが無防備なこと。
外見に惹かれてつきあったとも言えるかもしれない。
だけどそれ以上に惚れたのはおまえの性格。
俺を諦めさせたいなら、俺がいなくても大丈夫って思えるくらい、しっかりした女にでもなりやがれ。
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