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別れたことにしていなくても、俺は千香にしばらく声をかけることも、メールをすることもなかった。 まわりにフラれたことを言わなかったら、いそいそと千香との待ち合わせにいっていたことを知ってるやつらが、俺の気も知らずに聞いてくれる。 「隆太、待ち合わせだろ?」 それを言われるときほど、淋しいことはない。 1ヶ月の千香とのつきあいで、俺が彼女一番、彼女優先にしていることを理解してくれてるとも言えるけど。 しょぼしょぼと千香のこない待ち合わせ場所にいって、暗くなると家に帰る。 小学校、中学校のときの俺の家庭教師がなぜか居座って家政婦になっている。 母親と仲良くしていることから、あまり働きもせずに金をもらっているいい身分だと思う。 まだその家政婦も帰っていなくて、父親も母親も家にいて。 4人で飯を食べる。 親と話すのも嫌な俺は無言。 親が声をかけてくる。 「帰るの早いのね、隆太。彼女でもつくればいいのに」 …フラれてから言うな。 「おまえ、まだ彼女いないのか。無愛想でモテなさそうだもんな。少しは愛想よくしたほうがいいぞ」 俺の無愛想に磨きをかけた彼女はいた。 「隆太くん、顔はいいから大丈夫ですよ」 顔だけの男みたいに言うな。 なぜか話題は俺の彼女。 傷に塩を塗り込む親ども。 「もう高3なのにまだキスもしたことないんじゃない?そんなので大丈夫?」 キスくらいしたっ。 「高校出ても彼女できないんじゃないか?せめていい大学出ていい男に見られれば彼女できるだろ」 なんだよ、その俺の中身にはなんの魅力もないっていう言い方。 「高学歴、高収入。…身長、ちょっと低いですね。もっと食べて大きくなったほうがいいですよ、隆太くん」 俺をいつまで小学生扱いしやがる? 俺はやけ食いのように飯を食べまくってやる。 千香とつきあっているときに、やっぱり連れてくるべきだった。 おまえにはもったいないとでも言ってくれそうだけど。 親と飯を食うともういらないって以上に食わされる。 おかげで伸び悩んでいた背が2cm伸びた。 「そうだ。家族で番組出演しないかってお誘いあったんだけど、隆太…」 「なにがあってもそんなものには絶対につきあわない」 俺はそこだけははっきりと返事をする。 目立ちたがりの親ども。 少しは羞恥心を持ちやがれ。
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