Break

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握った手の指先を絡めて握り直して、千香を足の間に置いて、その頭に頭を軽くぶつけてすりっと擦り付ける。 千香は俺の肩に頭を乗せて、俺の服を掴む。 俺の甘えに千香が甘えてる。 俺がしたいことをして、千香が甘えている。 心地いい胸のドキドキ。 別れたなんて嘘みたいにこれが普通のように、千香は俺の腕の中。 俺もフラれたことなんて忘れて、千香といるこの時間に満たされる。 どれくらい、そのままくっついていたのか。 俺の肩に腕に千香の重みを感じて、その顔を見ると眠っているみたいで。 「千香?眠い?」 聞いてみると千香は頷く。 このまま寝てくれてもいいけど、その体勢では寝るのに苦しいだろう。 「膝枕してやろうか?」 千香は頭を横に振る。 「俺の家にくる?」 千香は頭を横に振って、その目を開けて俺を見る。 「…下心ねぇよ」 そう思われていそうで言っておく。 俺の部屋のベッドで寝ればいい。 俺が邪魔なら、俺は別の部屋で寝る。 客室使ってもいいし、リビングのソファーでもいい。 「…隆太がえっちなことしないから安心して眠くなっただけ」 俺が常に千香の体を狙ってると思うのはやめてもらいたい。 俺を暴走させるのは千香だ。 「なに?キスしてほしいの?」 俺は千香をからかうように言ってやる。 いつも千香にからかわれてばかりの仕返し。 「誰も言ってない」 さらっと返されて俺はいじける。 つまんねぇ…。 言葉よりも行動したほうが千香は戸惑ってくれる。 そっちのほうがおもしろいかも。 「もう帰ろうか」 千香はあくびを小さくしながら俺から離れようとして、俺は両手でぎゅっと強く抱きしめる。 「んっ、隆太っ」 今度は少し嫌がった。 その横顔にちゅっとキスをして腕を緩めて離してやる。 「帰ろうか。俺ん家に」 俺は立ち上がって、座りっぱなしだった体を伸ばす。 「私も?」 俺はうんと頷いてやる。 千香はどう答えるべきか迷ったような顔を見せて俺は笑う。 千香を自転車の後ろに乗せて、ちゃんと千香の家まで送ってやった。 俺の自転車の後ろにそれでも乗ったっていうこと。 それって俺に連れ去られていいってこと? 相変わらず無防備。 おまえがくれた別れの言葉を俺が信じるには、嘘が足りない。 本当の理由はなんだった?
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