Break

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千香からはメールも電話もない。 俺は待ち合わせ場所で千香を待つ。 最近ここで待ち合わせをしているカップルの女のほうがきて、俺がベンチを占領しているからか、ブランコで彼氏を待つ。 そこに千香を重ねてぼんやりと眺める。 あんなふうに千香も俺を待っていたのかなと。 どこかそわそわして、時間を見たり携帯を見たり。 女は俺の視線に気がついて、俺は目を逸らす。 そのうち、その彼氏がきて、仲良く帰っていく。 そのうち女と会釈する仲になって、そのうち女の待ち合わせの頻度は減って。 2週間もたたずに女はブランコで泣いていた。 いつもの時間を過ぎても彼氏はこない。 俺はジュースを買いにいって、女のぶんもついでに買って公園に戻る。 女はまだそこで泣いていた。 ペットボトルのジュースでとんとんと女の肩を叩くと、女は泣きまくった顔を上げて俺を見る。 俺はジュースを差し出す。 女は不思議そうに俺を見ながら受け取った。 「あげる」 「…彼女さん、まだこないんですか?」 泣いていたくせに、なぜ俺を気にかける? 「呼んだらくるんじゃないか?」 今日くらいに呼び出したいかもしれない。 そろそろ充電切れ。 誰でもいいからかまってくれと女に声をかけてしまった。 学校じゃもう完全に女を俺のまわりから排除しているのに。 「…待ち合わせじゃないんですか?」 「俺が勝手に待ってるだけ。そっちは彼氏は?」 聞いてやると女は泣いた。 「二股だったんです。あたし、本命じゃなかったみたいで。学校で声をかけちゃダメって言われたところで気がつくべきだったのに…」 何かが千香と俺を連想させる。 俺は二股なんてしていないけど、奈緒美があれだけ俺に絡んできていて、千香には冷やかされるから嫌だなんて…、二股にしか見えなかっただろうなと千香を思う。 「でも好きで…。諦めるなんてできなくて…。どうすればいいかわかんない…」 俺もこうすればいいなんて言えない。 諦めるなんて…できるわけないだろ。 俺は自分の恋愛に思う。 「誰かが諦めろって言った?もうやめろって言った?」 女は頭を横に振る。
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