584人が本棚に入れています
本棚に追加
初めて晃佑を私の家に案内した。
晃佑は私をここに置いて帰るつもりはないらしく、私が動かないでいると、服や下着を私の旅行鞄に詰めていく。
「一緒に住むの?」
「そう。どうせそのまま引きこもるだろ?だったら俺んちに引きこもっておけばいい。仕事で家にいない時間多いし。
お。見たことないかわいい下着発見。これ着て?」
晃佑は私の苺柄の子供っぽいブラとパンツを手にして、にこやかに私を見てきて。
私は慌ててその手から下着を奪う。
見られた…。
子供っぽいやつ。
私もかわいいなって思って気に入ってるけど、晃佑には見られたくなかったっ。
「服、今はそのまま俺の着ておくか。チカの服、体にぴったりして痛そうだし。下着つけたら病院な?保険証ある?」
昨日はどんよりだったけど、晃佑はてきぱきと私の荷物をまとめる。
私が言っていないのに、必要かなと思うものも鞄に詰めていく。
晃佑の強引ペースに引っ張られている気がしないでもない。
…でも、強引なくらいじゃないと、私、たぶん家から出ていない。
渋々と苺ぱんつとブラをつけて、保険証を持って病院にいって。
病院のあとは美容室にいって、私はばっさりと長かった髪を切った。
頭が軽い。
ショートなんて小学生ぶりかもしれない。
というか、髪が抜かれてところどころ禿げてる。
美容室を出る時にはやっぱりフードを深く被って。
外で待っていた晃佑は、さっきの間にどこかで買ってきたらしいニット帽を私にくれた。
禿げてるのを見られたのかもしれない。
うれしいとはなんだか喜べない。
「次は飯、っと。なに食べたい?」
「…晃佑の手作り料理」
無理だろうと思いながら言っただけである。
あんな別れ方をしたのに、晃佑が何も言わずに普通にそこにいて、私を連れ回すから。
「卵かけご飯でいいか?」
それ、料理とは言わないと思う。
「あっさりしたものがいい」
「サラダ作れって?お手軽。もっと凝ったものって言われるかと思ったのに。24時間スーパーで買い物して帰ろ。ん」
晃佑は私に手を差し出して。
私はその手にふれた。
私の手を指先のほうだけ軽く握って晃佑は歩き出す。
私が…近寄りたがっていないのもわかっているみたい。
最初のコメントを投稿しよう!