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「誰かに言われたとしても諦めたりできないだろ?こっちのほうがいいんだと思っていても、自分の気持ちなんて自分でもうまく動かせない。そんなもんじゃない?」
俺がそうなんだけど。
奈緒美や他のやつらの恋愛の話を聞いても、そんな感じを受けるから。
それはまちがってないと思う。
それでいいんだって思える。
「でもやめたい気持ちもあって…。でも…やっぱり好きで…」
「でもでもを繰り返して繰り返して、結局結論は出ない。それでいいんじゃない?」
俺は女の隣のブランコに座って、自分に買ったコーラのキャップを取って口をつける。
「…どうすればいいのか教えてください」
俺の適当な答えに不満そうに女は言う。
「だから俺が言っても、自分にしか自分は動かせない。他に自分を動かすとすれば、自分が惚れた相手。相手のその言葉や行動。違う?」
女のほうを見ると、鼻をすすりながら悩んでいる。
「…そうかもしれません。でも…先輩に言ってもらったら…悩まなくてすむし…」
「なんで俺に甘えてんの?」
「…なんか優しいから…です」
「ジュース奢ったこと?」
「…声をかけてくれたこと…です」
「俺が暇だったからなだけ」
「…でも声をかけられたかった気もするから…、やっぱり優しい…です」
「優しくないよ、俺は。親切にしてるつもりもない。それでも俺に何か言わせたいって言うなら…」
俺は考えてみる。
俺がどうしたいか。
「…二股の相手と別れるまで待っていれば?」
「それ…つらいです」
「文句言うなら自分のしたいようにすればいい。違う?」
女は俺の言葉に不満そうに悩む。
悩むと涙が止まってる。
つらいことばかり考えていると泣くのかもしれない。
他のことを考えていれば涙は止まるのかもしれない。
そこばかりに意識がいって悩むこともできないくらいでもなさそうだ。
「……先輩の彼女さんは?二股なんですか?」
「さぁ?」
山瀬と仲良くしているのは見るけど、山瀬とつきあっているのかは知らない。
それを見るのは前からあること。
そこに嫉妬できる千香の態度じゃない。
千香が山瀬にベタベタしていたら嫉妬するけど。
千香は山瀬を振り払って叩く。
俺のほうがベタベタしてくれる。
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