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「…先輩がどんな恋愛しているのかすごく気になるんですけど」
「憧れのアイドルと密会デート」
千香との恋愛を単純な言葉にしてみると、それかなぁと思う。
けっこう真面目に俺は答えたつもりだ。
女は泣いていたはずなのに笑った。
「アイドルなんですか?密会?」
「3年で一番かわいい子探してみて。それが俺の好きな子」
「探します。見つけたら声かけちゃっていいですか?先輩の名前聞いておいていいですか?」
「なんで俺の恋愛に興味持って泣き止んでんだよ」
「…あ。…あははっ。変なの。でも先輩の話を聞いてると面白くて。先輩ってモテますよね?かっこいいし」
「なんで俺に興味持ってんだよ。もう口きかない」
俺は女から顔を逸らして、またコーラに口をつける。
「いや。もっと先輩と話したいです。…新しい恋見つけちゃったかも」
「おまえ、失恋したって顔で泣きまくっていただろっ。俺に惚れても俺は絶対に振り返らないからな?俺の一番は一人だけ」
「二番でいいですよ?というか、浮気しない人って女の子に一番モテると思うんです。そんなふうにあたしも好きになってほしい…みたいな」
「おまえが二股いやって泣いていたんだろっ」
「……あ、そっか。そういう気の持ち方なんだ」
女は何か一人で納得して、かなり気が楽になったという顔で俺がやったジュースに口をつける。
「どういう気の持ち方?」
「最初から多くを求めたりしないっていうか。好きになってくれないのが当たり前みたいな。あたしが好きで、かまってくれる二番目。それがつらくていやって嘆いたら終わっても当たり前。二番目がいやなら一番になってやるってがんばらなきゃ。二番目だったからって泣いていちゃダメ」
どうやら女は自分の進む方向を見つけたらしい。
俺は狙われることにならなくてすんで、ほっとする。
「…もしも先輩がフラれたらあたしの二番目にしてあげます」
女は笑って言って、俺は笑う。
「いらねぇよ、そんなの」
千香のなら二番でも三番でも。
あぁ。また会いたくなった。
思いきり抱きしめてキスしたい。
俺の気持ち、そこにあるんだって伝えまくりたい。
嫌なら全力で拒否して。
俺が嫌いなら嫌いと言って。
俺の甘えに甘えるおまえがいる限り、俺は離れられない。
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