Break

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千香が別れの言葉に使った遊びがどんな遊びだったのか俺には理解できない。 二番でも三番でも。 俺にとっては一番だけど、なんでもいい。 千香の手が俺を抱きしめてくれるなら。 家に帰って飯を食べて、気合い入れすぎない程度にお洒落して。 俺は千香に会いたいとメールする。 返信はやっぱりない。 あの公園で待ってると一方的なメールを送って、勝手に公園で待つ。 いかないなんて返信メールがきた。 それでも待ってる。もうついたとメール入れて、もう一回いかないって返事をもらう。 …淋しい。 わかってるけど。 千香が俺と別れたことにしたいのはわかってるけど。 俺の甘えに甘えてほしい。 しつこいんだよって嫌った顔を見せてくれないと、俺はまだ期待してる。 公園のベンチに座って、いちごの飴を口に入れる。 俺に淋しさやうれしさを与えるのは千香だけ。 1時間たっても千香はこなくて、俺は胸の痛みに溜め息をつく。 会いたい。 ふれたい。 前があっさりと会えてしまったのが悪い。 期待してここから帰れそうにない。 まだ待ってるなんてことはないよね? そんな千香からのメールが届いた。 待ってるよ。千香の家までいっていい?会いたい。 俺はそんな返信をする。 どうしてもそこまではいけないけど。 千香に偶然でもいいから会えないかなと、いきたくなる。 いったら本当に嫌われそうでいけない。 嫌われて当然とも思えるし、嫌ってくれたら諦めがつくとも思えるのに。 まだ嫌われたくない。 また飴を口に入れて、口の中で転がすと千香とキスしたあのときを思い出す。 そこにすがってる。 俺は馬鹿だ。 でも千香のほうが馬鹿だと思う。 千香は公園にきた。 勝手に待って淋しくなっていた俺を見て、少し怒ったような顔を見せて近づいてくる。 「いかないって言ったじゃないっ」 俺の前までくると、俺を見下ろして怒る。 俺は千香を見上げて、ここにきてくれたのがすごくうれしいのに拗ねたような顔を見せてしまう。 だったらおまえもくんなって言いたくなる。 これのせいでまた次にも俺が会いたいとメールしたら会えると思ってしまう。 1日でも2日でもここにいて待ってしまう。 忠犬ハチ公にはなりたくないのに。
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