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「…会いたかったんだよっ」
俺は素直にその気持ちを拗ねた口調で口にした。
「こんなふうに会っていたら別れた意味ないじゃないっ」
「どんな意味?俺には別れる意味のほうがない」
千香は答えず、俺を不満そうに見る。
手を伸ばしてふれようとすると、千香は俺を避けるように身をひく。
「……もうつきあってない。抱きしめるのダメ」
はっきりと言ってくれるけど、だったらくんなってところで。
俺が立ち上がると、千香は公園の中、逃げるように後ずさる。
俺は一歩千香に近づく。
「……ふれちゃダメ。…って近づいてくるのダメだってばっ」
千香は逃げるように走って、俺は千香を追いかける。
なぜか夜に小さな公園で追いかけっこ。
今度こそ張り倒されそうに思いながらも、千香の腕を捕まえて、近くのジャングルジムに押しつけるように、俺とジャングルジムの間に挟んで捕獲。
少しの息切れ。
千香は俺を見て俺も千香を見る。
「……好きだよ」
まっすぐに目を見て、俺は俺の中にあるその気持ちを伝えた。
千香は俺の腕にふれて、逃げようと俺の腕を押すのかと思えば、袖をぎゅっと掴む。
少し俯いたその顔。
俺は屈むようにして、下から唇に唇を押し当てる。
好きだよと唇から伝えるように、ゆっくりと。
片手は千香の腕を握ったまま。
唇を離しながら目を開けると、千香は目を閉じて俺のキスを受け止めていて。
鼻先がふれあうくらい近くでその目が俺を見る。
睨んでくれたらいいのに。
張り倒してくれていいのに。
そんな曖昧な態度じゃ、まだ俺を振りきれない。
受け止めてくれなくていい。
俺が千香を好きなだけ。
もう一度キス。
更にもう一度。
「…だめ…」
なんて小さな声で拒否をもらっても、その手は俺の服を掴んだまま。
千香の頭を撫でるように手を当てて、もう一度キス。
千香の顎は俺の唇を受け止めるようにあがってる。
「……隆太、だめ…」
「…もっとしてとしか聞こえない。千香の唇、気持ちいい…。好き。この髪もその目も」
俺は千香の唇に何度も何度もキス。
唇を擦り合わせて長いキス。
千香の背は後ろのジャングルジムで支えられて、俺は更に体を寄せてキスをしまくる。
俺の強引さに千香は引っ張られてくれる。
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