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夏休みだったこともあって、予備校のない日は必ず待ち合わせ場所の公園で待ってるなんてことはなかった。
千香に会いたくてどうしようもないときにはその公園や、千香とデートした場所を巡った。
メールをしても返事はくれないから。
夏休みが終わり、新学期になって千香の姿を久しぶりに見た。
少し髪型かわっていた。
…かわいい。
また俺にとってアイドルを見ているだけのような毎日。
昼休みの教室の窓の外、山瀬に絡まれている千香をぼんやりとかわいいなぁと眺めていたら、俺の背中に蹴りが入った。
コウにしては軽い。
あいつが蹴ると俺はここから突き落とされそうになる。
振り返ると奈緒美が不機嫌に俺を見ている。
俺は女と話していない。
素で無視して、また千香のほうを見ようとしたら、奈緒美は俺に足を振り上げて、俺はそう何度も蹴られてやりたくなくてかわす。
「パンチラ見せんな」
「若林が山瀬とつきあってるって本当?あんた、なにやってんの?」
「それを言うために蹴ってきたのかよっ」
俺は奈緒美がもう一回振り上げた足を掴んで止めた。
そのパンツをじっと見たら、赤くなって喚いて暴れた。
奈緒美は俺の近くの机の上に座り、俺が見ていた千香を見る。
結局絡まれてしまう俺である。
俺にも奈緒美ほどの根性が欲しいかもしれない。
千香にかまってもらいたいのに、小休止とかいって見ているだけなのは、挫けてると言える。
「夏休み、中学の男友達に偶然会ってライブ誘われていってみたら、山瀬のバンドだったの。若林がドラム叩いてた」
山瀬と千香の共通の趣味なんか聞きたくない。
音楽が嫌いとは言わないが、それがあるから嫌いになりそう。
「千香、どうだった?」
「…上手かった」
奈緒美は気に入らないといった顔で誉める。
俺も気に入らない。
俺の千香がいいのに、山瀬の隣で笑っていやがる。
「あたしが隆太にフラれてやったのに、隆太がフラれてんのいやだよ。ちゃんとつきあっててよ」
「……それ俺に言うのがまちがってる」
俺だってフラれたくない。
俺を振った千香に言ってくれ。
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