584人が本棚に入れています
本棚に追加
自分の進むべき道は見えないまま。
奈緒美にはっきりとこうするとは言えないまま。
自分のことほどわからなくなる。
いつか千香に言われたように自分を見直してみると、自分が好きならそれでいいという態度で。
本当にそれでいいのかと奈緒美が俺にしつこく絡んできたときの自分の気持ちを思い返す。
予備校の帰り道、ファーストフードでも食べて帰ろうと店に寄ると、山瀬が噂の年下彼女といるのを見かけた。
普通に楽しそうにやっていた。
千香とつきあってるくせになにやってんだよと絡みたくもなる。
俺は山瀬を見れる位置に席をとって、食べて腹を満たしながら山瀬を眺める。
山瀬と彼女は仲良くて、人目も気にせずにべたべたしてる。
彼女も楽しそうだ。
彼女は千香という山瀬の二股の相手を知っているのだろうか?
食べ終わっても、山瀬と彼女がそこにいるから、ジュースを片手に眺めていた。
なにか視線でも感じたのか、山瀬は俺を振り返り、俺を見ると慌てたように席をたつ。
俺が千香の元彼になるというのは、山瀬も知っているかと思われる。
俺は食べ終わったものをゴミ箱に捨てて、山瀬に圧力かけるように、思いきりわかりやすいようにそのカップルについていく。
一応、距離はとってやる。
話している会話は聞こえない。
山瀬は彼女の手をひいて歩きながら、何度も俺を振り返る。
そのうち振り返るたびに愛想笑いを見せてやることにした。
山瀬の彼女も俺に気がついて振り返ってくるようになった。
なんとなく山瀬に俺のことを言っている気がする。
破壊活動をしているつもりもないが、破壊になるのかもしれない。
俺がしつこく後をつけて歩くからか、山瀬は立ち止まり、俺も距離を開けて立ち止まる。
山瀬は彼女の手をひいて、俺のほうに近づいてきた。
「……加藤、尾行なら見えないようにしてくれ」
初めて山瀬と話す気がする。
俺は山瀬の隣のおとなしそうな彼女を見る。
彼女はわかっているのかいないのか、俺に愛想笑いを見せて会釈して、俺も愛想笑いを見せて会釈。
「山瀬先輩の友達ですよね?」
彼女も俺に声をかけてくる。
どう言ってやろうか。
俺の返答次第で壊れるんだろうか。
ちょっと面白い。
最初のコメントを投稿しよう!