Beats me

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俺に千香を引き寄せる魅力がないと思うと凹む。 そんな俺でも告白してくる女はまだいる。 コウの元カノではなくても断る俺がいる。 やっぱり俺は親が言うように中身のない男なのかもしれない。 つきあったのは千香だけ。 俺の中身をよく知るのは千香だけ。 その千香に逃げられるってそういうことだろと思うと凹みまくる。 山瀬より俺のほうがちゃんと彼氏になってやるのにと、いつか奈緒美が俺に言ったようなことを思う。 妄想の中の千香は言う。 「本当にそう思う?」 …思いきれないところもある。 あるから期待してまだ前にも後ろにもいけない。 …おまえが俺に見せてくれたもの、その言葉、ただそれだけのつきあいと思うには俺には足りない。 でもおまえは他の言葉を俺にくれない。 もっと傷つけて。 俺を泣かせて。 おまえのことばかり考えてしまう俺を殺して。 「ごめんね。嘘つくの苦手かもしれない」 本当のこと言ってくれれば俺は満足する。 すべてを否定しておまえを押せる。 俺が悪いなら改めることを考えることもできる。 俺の中身に魅力がないとおまえが言えば、それを信じる。 …おまえ、ずるいだろ。それ。 逃げるだけ。 俺が本気だと言っても逃げるだけ。 どんなに責めてみても、それさえも千香のことばかり考えてしまっているだけで。 俺の気持ちはどこにも動けない。 ただ求めてるまま。 千香が欲しいと求めてしまっているまま。 俺が山瀬に絡んでいくことはない。 でも見ている。 どんな男なら千香が寄りかかるのかと。 「見られるのいやなんですけど」 山瀬は俺の視線に俺に絡んでくる。 「…おまえが千香と別れたら千香はどうなる?」 「他の男探すと思うけど。…というか、俺、おまえのかわりにされてると思う。千香、あんなにかわいくはなかったのに、なんかかわいいし」 ムカつく。 「だったら俺に甘えろや」 「俺にケンカ越しに言うなっ」 山瀬は言ったかと思うと、俺に甘えるように抱きついてこようとして、俺は蹴ってやる。 こんなライバル、ムカつきすぎる。 余裕ありすぎてムカつく。 その彼女やっぱり奪ってやろうか。 俺に気を向けさせるだけ向けさせて…。 …つまらない遊び。 したくない。
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