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「って開けてもないのかよ。開けてやれば?」
「見ても見なくても返事は一緒だし。返事の催促もされないし、ただの手紙かもよ。俺の悪口いっぱい書いてあったりしてな」
思ってもいない。
直接渡された。
真っ赤になってた。
そんな顔でラブレター以外のどんな手紙を渡すというのか。
「いつ別れたのかも知らないけど次いけば?」
俺はそれを少し考えてみる。
「…どうやったらおまえみたいに、すぐに彼女できるんだよ?」
「来る者拒まず。つきあってみないと相性もわからないだろ」
わかっているけど。
わからない。
俺は座っていた椅子を回転させてコウを振り返る。
「つきあいたいとも思わないのにつきあうのか?」
「本気で嫌な相手に告白されたこともない。本気で嫌だと思う相手もいない。…10くらい年上のお姉様に引っかけられてもいいとも思うし、10くらい年下の幼女とお遊びでもいいかもな」
「母親と同年代とか」
「不倫はいや。彼氏持ちも面倒だからいや。別れたらつきあってもいい」
「おまえ、好きな女は?」
「…つきあってるうちに好きになる。でもフラれる」
コウは淡々と答えてくれるけど、どうしても俺と違うから理解できない。
俺のことも理解してくれるとは思えない。
恋愛経験豊富なこいつに、どうすればいいのか聞いてみたいところでもあるのに。
豊富すぎて考え方の根本が違う気がする。
「好きになってフラれて未練残らないのか?おまえの元カノが連れとつきあうことになんとも思わないのか?」
「……そういうときは、奈緒美みたいにはっきり言ってくる。隆太に惚れたから別れたい。俺には友達に戻ってほしい。そう言われて引き留めろって?
そこに未練残して引きずるより、次に拾ってくれる女と楽しくしていたほうが俺は楽しい。俺を振った女がおまえに振られようが俺にはどうでもいい。
けどな、一つ言うなら、未練とするなら、できるなら俺は奈緒美がおまえとつきあって幸せだって笑ってる顔が見たかった」
初めて聞いたかもしれない。
コウが奈緒美に惚れていたこと。
いろんな女とつきあってるからと、すべて軽いつきあいというわけでもないみたいだ。
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