Shan't

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「……どこのことを言ってるのか謎だ。確かに何度かこの家にきたことはある。けど…、そういうんじゃなくて。クスリをやめる、更生するって言うから、薬物が抜けかけた禁断症状のときに夜につきあってやってた。 …やめなかったけどな、あの馬鹿。何度も何度も世話かけさせて繰り返して。もう警察で治療してもらえばいい」 晃佑は自分がやいた世話にトモが応えることなく、繰り返していたことを思い出してイラついたように拳を握る。 「クスリ?」 「覚醒剤のときもあればコカイン、ヘロイン、その他諸々。お陰でそっち方面にも詳しくなった。…クスリやめられたらつきあってやるって言ってやったのに、まったくやめられる気配ないし…。 つきあわないって態度を見せていたら、おまえが襲われた」 晃佑は私を見て、私は顔を隠すように晃佑から顔を逸らしてフードを深く被り直す。 「…晃佑のせいではないでしょ」 「本人が俺のせいだって言ってたの。だから俺のせいらしい。……ごめん」 晃佑は私に頭を下げる。 その償いのように、私の面倒をみてくれているのかな…なんて思って、寂しくなった。 一緒にいるけど…、やり直しているわけじゃない。 私は私が晃佑に言いたかったことを言っていない。 ……言わないほうが…いいのかな。 掴んだままの晃佑の服の袖を、その私の手に視線を移す。 ここに…いてもいいのかな? いつか加藤くんが言っていた晃佑の評価を思い出す。 誰にでも優しすぎる人。 「晃佑のせいじゃないって私が思っているから、晃佑のせいじゃないの。……私も禁断症状出るのかな?…欲しいとは思わないんだけど」 「カズの家から押収された薬物の種類が多くて、おまえが何を口に入れられていたのかはわからない。って、また話を逸らしやがる」 「警察にも知り合いいそうだね、晃佑」 「飲み屋でたまたま隣にいたオッサンがGメンで連れになった。今回はそのオッサンに頼んだ」 晃佑の交友関係は把握できそうにないと思う。 そのうち芸能人にも知り合いがいるとか言いそうだ。 「俺もチカの連れ、知りたいかも。高校の頃の連れとまだつきあいある?」 私の頭にはすぐに千香の顔が浮かんだ。 助けてと思ったときに千香を一つも思い出してあげなかったのは、友情より恋愛をとる女かもしれないと自分を思う。
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