Beats me

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「……甘えすぎてしまうから」 千香はしばらく考えた様子を見せると、そんな理由にならない言葉をくれた。 俺がもう嫌だと言うまで甘えてからにしてくれ。 そんな言葉では俺は切り裂かれない。 「そんなの迷惑なんて思わない。山瀬と別れたなら、俺ともう一回つきあって。俺の彼女になって」 「…法学部合格したら」 そんな条件、もういらない。 振るならもっと違う言葉を持てよ。 「それは受かる。絶対受かる」 「まだ受けてもいない。自信持ちすぎて落ちるんじゃない?」 「条件つけるんじゃなくて、おまえの気持ちでたまには言えよっ」 俺は少し声を荒げた。 俺が聞きたい言葉を俺は探してる。 もう一度本気でつきあってほしくて言ってるわけじゃない。 どこまで俺を見せれば俺を否定してくれるのか探してる。 「学校の中でもいちゃいちゃしてくれる?」 「する。……抱きしめていい?」 聞いてみると千香は頷いて、俺は千香を抱き寄せた。 放課後の校内。 もう随分前から俺が校内でもどこでも千香といちゃつくことに抵抗もないことわかってない? 千香が俺の背中を強く抱いてくるから、まだここに残るものを俺の中に感じて自分が情けなくて泣きたくなる。 離れたい。 離れたくない。 二番でも三番でも俺はかまわない。 二番にも三番にも千香はしてくれない。 何を言っても、もう終わった恋。 「…俺は千香のもので、千香は俺のもの。千香を俺の鳥籠に閉じ込めて出してやらない」 俺は千香の背中を撫でて、その頭を俺の肩に抱き寄せた。 「……ごめん。隆太とはつきあえない」 千香の答えに俺は千香の背中を強く抱きしめる。 千香が苦しいと声をあげそうなくらい強く。 そんな言葉しか千香にはないのかよ。 つきあえないなら、俺の腕の中を嫌がれよ。 俺にはおまえがわからない。 「……大丈夫だよ。隆太、モテるし。私よりかわいい子、いくらでも寄ってくる」 「……それ、慰めてる?振ってるのはおまえで、振られてるのは俺だろ?」 「もっと…隆太に似合う子、いるから…」 俺は顎を掴んで千香の顔を無理矢理あげさせて、その顔を正面から見る。 千香は俺から目を逸らすように目を伏せる。
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