Beats me

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受け取れない。 そればかり。 他にあるだろ? まだ逃げるの? 俺はもうやめたい。 探してる。 でもどこまでも俺を否定してくれない。 そんな目を閉じたらダメだろ?無防備。 俺にキスされたい? 嫌なら俺を強く睨み付けて、しつこい、気持ち悪いって言えよ。 俺がモテるから? 俺に似合う女が他にいるから? なに? おまえを追うな? 違うだろ? 俺に興味ないってどうして言えない? どうして平手打ちでも食らわせない? そんなんだから、俺が期待して待ってしまうこと覚えろよ。 ずるい女。 俺の手に千香の手がふれる。 俺は千香の手を振り払うように顎を離してやった。 もう…やめる。 やめたい。 大好きで大嫌いで愛しくて憎くて。 離れられない俺の初恋。 俺は泣きそうになって、捨て台詞も何も残せずに千香に背を向けた。 やめたい。 思っても、抱き寄せたその体、この腕の中にその感触も残っていて。 その体温も残っていて。 忘れられない。 悔しくて、悔しくて、思うままにならない自分が本当に嫌で。 自転車置き場まで辿り着いて、俺はそこで堪えきれなくなった涙を溢した。 どんなに嫌だと思っても、どんなにやめたいと思っても。 震えるくらいまだ愛しい。 腕で涙を拭ってもまだ溢れてきて、自転車置き場の影に隠れるように座り込んで、暗くなるまでそこにいた。 千香。 どうせなら、まともにおまえとつきあう男を選んでくれ。 山瀬は不安だ。 まともな男とつきあって、おまえがそこに寄りかかって癒されるなら、もうそれでいい。 情けないくらい泣きまくって燃え尽きた。 かっこつかない俺の恋愛。 冬休みが終わって、3学期は1ヶ月しか学校もない。 俺は静かにおとなしく最後の高校生活を送る。 廊下を歩いていると、背中にタックルかまされて、思わず前のめりに転びそうになった。 何かと思って振り返ると、山瀬の彼女。 「…別れた?」 その後を俺は知らない。 聞いてみると山瀬の彼女は俺を見上げる。 「山瀬先輩、若林先輩と別れたみたいですよ。チャンスです、先輩」 いや、もういい。 「美恵ちゃんは山瀬とつきあってんの?」
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