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「別れました。山瀬先輩、モテるし。すぐに彼女できるだろうけど。……フラれてやりたくなくて、振っちゃいました」
山瀬の彼女…、元カノはうれしそうに言う。
「振ったことがうれしいの?」
「二股されて他の人にとられて、挙げ句にフラれるよりはよくないですか?」
「泣きまくっていただろ?」
「……もういいんです」
なんか強がってるのかなぁと思う。
俺は山瀬の元カノの頭を撫でてやってみる。
山瀬の元カノはうれしそうに笑って、俺に尻尾を振りまくる。
なつかれている。
奈緒美みたいに虐めてみたくなる。
頬を引っ張ると嫌そうな顔を見せながらも、俺の腰に回した腕は離さない。
軽くデコピンしてやると、俺の体に顔を擦りつけて更に甘えてくる。
俺は軽く虐めまくって、そのたびに山瀬の元カノは俺に更にくっついてくる。
宣言通りに抱きしめられて癒されてしまっている。
そんなところに山瀬が通りかかった。
俺と元カノを見て、そのまま通りすぎていくかと思えば振り返る。
俺はあれを見ろと元カノの髪を引っ張る。
元カノは俺の体にべーったりくっついて、俺の弄りにも慣れてきたようにやだやだ笑って言いながら見ていない。
「なに?」
俺から振り返った山瀬に声をかけてやった。
元カノは顔をあげて俺の声をかけた相手を見て、俺の影に隠れる。
「……千香はなんでおまえに寄りかからないんだ?」
俺の頬がひくついた。
「それは俺が聞きたいっ!」
「千香の本命は加藤だと思ってたのに。……美恵、加藤にあんまりベタベタするなよ。千香が加藤のこと誤解する。応援したいなら邪魔するな」
山瀬に言われて、元カノは不服そうに俺から手を離す。
応援してくれているのは本当らしい。
「山瀬も俺を応援してんの?」
「…千香がおまえに戻るなら別れてもいいって思った」
それは応援だろうか?
山瀬は俺に近づいてきて、元カノにかまっていこうとしているのかと思って避けてやろうとすると、俺を正面から抱きしめてきた。
ぎゅーっと抱きしめられて、俺は鳥肌。
振り払うように暴れると山瀬は笑って俺から離れる。
「おまえなっ」
「慰めてやった」
「いらねぇよっ!」
ライバル共々フラれた。
千香はふわふわと無防備に甘えられる男を探す。
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