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俺にとってなんの意味もない法学部に合格した。
引越し先を決めて、着々と一人暮らしの準備。
このために小遣い貯めていたのに、親が出してくれることになった。
ついでに車の免許をとれと金を出された。
ありがたくはある。
あるが、金という餌に餌付けされているような気がして、自分で稼いでやっていきたいようにも思う。
ねだることを俺は知らないかもしれない。
3月に教習所に通いまくって免許を手に入れると車も買っていただけた。
ありがたくはある。
ただ俺の親は少しひどい。
「いい車に乗っていたら少しはいい男に見えるかもね。大学中退したら学費も車も教習費も一人暮らしの家の代金も全額揃えて返してね」
なんてことをにっこり笑って言いやがる。
くれてから言うのはどうなんだと言いたい。
いや、俺が中退しなければいい話だけど。
何かが卑怯だ。
300万以上を揃えて返せというのは脅しだ。
それでも念願の一人暮らし。
バイトしながらでもこれくらいの家なら払っていけるかなという小さなワンルーム。
父親が餞別にくれた六法全書という司法試験を受けるなら絶対に必要となる分厚くて重い何冊もの本。
母親が餞別にくれた自分が書いた何冊かの恋愛エッセイ。
それらは収納の奥に突っ込んでおく。
家政婦からも餞別をいただいていて、何かなとけっこう大きな箱の包装をとる。
すぐに使えそうな日用品でもくれたのならありがたい。
箱を開けると、更にいくつかの同じ箱。
見たこともないものに中身が何か裏書きを見る。
山盛りコンドーム。
…でき婚するなってことか?
で、相手は?
ゴミ箱に今すぐ捨ててやろうとして思いとどまり。
溜め息をついてありがたく1箱だけおいて、あとは収納の奥に押し込んでおく。
そんな相手は俺にはいない。
必要になったこともまだない。
家政婦の嫌がらせ。
それでも大学に入って少しは大人扱いしてくれるようになったということにしておく。
6つ年上なだけで俺を子供扱い。
家政婦ではあるけど、俺にとっては姉のようなものかもしれない。
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