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八方美人というやつ。
たいして話さずに見送ったあと、別の女が声をかけてくる。
「リュウ、まさかつきあってないよねっ?」
何か焦ったように聞かれた。
「俺があれとつきあったら何股目くらいになりそう?」
「8股?……なに?知ってるの?」
「それっぽいなぁと。8人も彼氏いてどうすんの?」
「何を見て、それっぽいって…。…貢がせてるみたいだよ。ブランド物買わせてお礼に体をあげるみたいな。…コウも貢がされてるのかなぁ」
と言って心配しているのはコウの元カノだから。
友達に戻りましょうと言われて別れるのは、ケンカをしないってことだろう。
あれだけ愚痴られるようなことをしていながら、もう嫌い。顔も見たくないと言われるような男にならないのが不思議だ。
「それって騙してんのかな…。7人全員了承済み?」
「違うと思う。騙してると思う。でも男も女にちやほやされるとうれしいでしょ?男心をくすぐるのがうまいんじゃないかな?あの子」
「小悪魔か」
「リュウは騙されないでね?私が嫉妬で言ってるだけなんて思わないでね?」
俺は笑って頷く。
頷いて、徘徊彼女がこっちに戻ってくるのを見ると、手招きして呼んだ。
「ちょっとリュウっ」
女はどこか怒る。
「いいんだよ。俺がお仕置きしてやるから」
「…お仕置き?」
「全員切らせて振ってやる」
「できる?そんなの」
「さあ?やってみる」
「なにそのゲーム」
「小悪魔ゲーム」
話している間にもその女は俺に気がついて、俺に近寄ってきてくれる。
「隆太、なに?どしたの?」
俺は更に手招き。
女は俺に耳を寄せて、俺は女の耳に口を近づけて内緒話。
「なぁ?つきあおう?今から二人で出られる?」
「…そこの人と話していたくせに」
女は俺の近くにいたもう一人の女を見る。
「別に構わないよな?」
「…リュウ、なにしようとしてるの?」
女は咎めるように俺に言う。
「おまえに関係ない。
ほら、いこう」
俺は八方美人の女の手を握って引いて歩き出す。
外に連れ出したら、お願いと俺が甘えて寄り添って歩く。
女をちやほやしてみる。
女を満たしまくるように俺が下手になる。
誉めまくる。
下僕のように。
女は俺とつきあうと言った。
ここまでは簡単。
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