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小悪魔と思われそうなことを片っ端からやってみる。
相手の気持ちを惑わせれば上等。
気のあるような、ないような、そんな曖昧さで。
バイト先に呼んで二人きりになってみたり。
八方美人の彼女はかわいげをよく知っているらしく、常にかわいい顔を見せてくれる。
「あのね、友達が彼氏から指輪もらったんだって自慢してきたの。あたしも指輪欲しい。リュウくん、買って?」
とうとうおねだりがきたのはつきあって3日目。
ハイペースでねだるなぁと思う。
「いいけど、おまえも俺に何か買ってくれる?」
「手作りのケーキ作ってあげる。あんまり上手じゃないけど一生懸命つくるね」
女は笑顔で少し恥ずかしげを持って言う。
すげぇ。これで騙される男いんのかよ。
いや、これは違うか。
キスまではしそうだから、餌はその先か。
…千香を思い出す。
あれは小悪魔だったのか?
あいつの場合は言ってみただけだろう。
「ここ欲しい」
俺は女の唇にふれる。
「だーめ。まだつきあって3日目だよ?」
なんて言うくせに俺の指にキス。
迫ってキスしてやろうとしたら、顔を伏せて俺の胸を軽く叩く。
「だめだってば」
「指輪買うのに金貯めないとだし…。俺の手作りの箱あげる。そしたらなにくれる?…欲しいのは一つなんだけどな」
小悪魔ゲーム。
そんなのいらないとは真っ正面から言えない。
「…箱?え…と…」
迷う女に俺は愛想笑いで押し通す。
「…他の欲しい人にあげたらどうかな?」
「おまえにもらってほしい。お返しなにくれる?」
「…ケーキ」
女の手を潰しつつ、女の男関係を携帯や偶然を装っての出会い頭で潰していく。
自分がここまでできるとも思わなかった。
なかなか楽しい小悪魔ゲーム。
女は俺をそろそろ振るんじゃないかと思うのに、俺とつきあったまま。
「俺、我が儘じゃないか?」
さすがに女の手を潰しすぎてフラれそうに思うから言ってみた。
二人きりの夜の路地裏。
女は俺に甘えるようにくっついている。
「…いいよ。もっと独り占めして。リュウくんがいてくれるならいいよ」
何かがまずい方向に向かっている気がする。
俺はゲームのつもりのままなのに、女は恋愛になってきた。
つきあって2週間目。
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