Breezy

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お仕置きのつもりだったけどかわいいし。 俺は貢がされていないし。 女が最初にねだった指輪も銀粘土で俺が手作りしてみた。 シルバーアクセサリーが手作りで簡単に作れる銀粘土。 最近興味のある俺の物作り趣味の一つ。 無理矢理押しつけたのにお礼にキスをいただいた。 俺の手作りのものに喜ぶかわいい彼女になっている。 「次、ペンダントトップ作って?小さめので、こんなのが欲しい」 女は俺にその場で地面にデザインを描いていく。 「一緒に作ってみる?」 「やりたいっ」 思いきり本気で作りたいらしい。 「じゃ俺の家いこっか」 「…手、出しちゃだめだよ?」 「出さないって。お礼にキスはちょうだい」 そこをねだるとうれしそうに恥ずかしそうに笑って、俺に飛びついてくる。 …うん、かわいい。 俺、騙されてんのかな? まったく痛くも痒くもないけど。 なんていうつきあいで、小悪魔ゲームは普通のつきあいになっていた。 気がつくと1ヶ月半。 キスだけでもいちゃいちゃしたつきあい。 揃いのペンダントトップ作ってつけていたり。 手を繋いでデートしたり。 恐ろしい小悪魔かと思ったけど、かまわれていたかっただけの寂しがり屋。 破局は俺がテストでかまってやれなかったときに女が浮気した。 俺は許した。 最初から浮気でもあったし。 でも女が泣いた。 まだつきあおうって言ったのに、女が嫌がった。 「大丈夫だって。怒ってないから。おいで」 俺は子犬を抱くように女を抱きしめて、女は俺の腕の中で泣きまくる。 「リュウくん、ごめんね。ごめん…。あたし、最初、リュウくんのこと騙してたの。彼氏いっぱいいた。リュウくんに高いもの買ってもらおうとした」 「買ったことない」 「買ったものよりリュウくんがつくってくれたもの、かわいくてうれしかった。ごめんね。もうやめる。もうリュウくんにつきあわせたりしない」 「やめなくていいって。つきあわせていいから」 女は頭を横に振りまくって頷くことはなかった。 かわいかった。 俺がフラれた。 つきあった3回。 3回ともフラれた。 コウとは違うフラれ虫になりつつある。
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