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物事を考察するための案件は既に4つある。
1つめは年月が離れていることもあって別件として、3つある案件から推察するに…。
…俺の魅力がない。
中身のない男になんてなりたくてなるわけでもないし、どうすれば中身が養えるのか母親の恋愛エッセイを真面目に読んでみる。
中身とはつまりなんだ?ということになってきた。
性格、趣味、特技、そういったものだろうと思う。
趣味も特技も俺にはある。
物を作る趣味と特技。
物をデザインして形にする趣味と特技。
木材と銀粘土はやった。
次はワイヤークラフトでもしてみようかと思っている。
…それだけしかないけど何か悪いのかっ?
母親の恋愛エッセイは夢物語かのような言葉で他の理由をつくってる。
「運命の人に会っていないだけ」
赤い糸というものが本当にあるのなら、今すぐ手繰り寄せたい。
俺だってちゃんとつきあっていきたい。
…母親の運命の人が父親だとして。
運命の人だからといっても常に平穏な恋愛でもないようだ。
いろんなことを考えると気持ち悪くなって、俺は母親の恋愛エッセイを収納の奥に封印した。
1年で3人とつきあって別れて、なかなかハイペースにコウのあとを追いかけてしまっている俺がいる。
5人目の彼女はクラブのイベントで知り合った。
女だらけできゃあきゃあ騒いで楽しんでいた彼女にぶつかられて、なんとか転ばずにすんだはいいけど、頭からどばっとビールが降ってきた。
「きゃあああっ!ごめんなさいっ。ごめんなさいっ!」
なんて大声で騒いで、俺の着ていた服を脱がしにかかってくる。
「いや、いい。大丈夫」
「そういうわけにはいきませんっ。うわっ、ビールくさいっ。ごめんなさいっ。クリーニングして返しますっ。あ、じゃなくてお金っ。…って、きゃあああっ!ちょっと待って、小銭落としたっ!」
騒がしくてドジっこ。
俺と俺の近くにいた連れは彼女に巻き込まれるように暗い店内の足元、小銭を拾い集める。
そんなきっかけで知り合って、偶然町で会って、また小銭ばらまいていたから拾い集めるのを手伝って。
何回か顔を合わせて話して俺から言ってみた。
「つきあおっか?」
彼女は目を丸くして俺を見た。
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