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「…あのぅ、それってなんのドッキリでしょう?あ、それより隆太、ワイヤークラフトのこと。今ちょうど学校でやってるんだ。持ってきたから見て見て」
思いきり流された。
造形の学校に通うドジっこ1つ年上彼女。
俺に見せようと持ってきたワイヤークラフトはもちろんのことのように潰れていて。
俺は泣きそうになってる彼女と一緒にそれを立体に戻していく。
…この馬鹿なところがかわいすぎる。
「本気。つきあおう?」
「隆太、イケメンだからいや」
「イケメンじゃないって。法学部の生真面目好青年」
「隆太、優しいからいや」
「優しくないって。潰してやろうか、これ」
「やめてーっ。これ以上潰さないでーっ」
「じゃあつきあおう?」
「…どうせすぐにいなくなっちゃうでしょ?そんな彼氏いらない」
…かわいい。
「すぐにいなくなったりしないって。俺、フラれてばっかりだよ。振ったことないよ」
「……別れるときは私にも隆太を振らせてくれる?」
「なにそれ?そんな先のことなんてわからないって。俺から振ったことないし別れを決めてるのは俺じゃない」
「いいの。別れたいって隆太が思ったら、言ってくれたらいい言葉を決めとく」
「なに?すぐ俺が言いそうなのはなしだからな?」
「…じゃあ、かわいいって言って。そしたらバイバイって言ってあげる」
「…かわいいって思ってる。それ却下」
「口うますぎ。隆太の口から誉め言葉しか出ないとしたら…、ブス?それでいいや。本当にブスだしデブだし言われたくないけど、キレてバイバイって言いやすくなりそう」
「なにその合言葉。それ了承したらつきあってくれるの?」
「うん。いいよ。隆太は私でいいの?」
「おまえがいい」
「……そんなのさらっと言わないでよっ」
なんか怒られた。
喜怒哀楽激しいドジっこ合言葉彼女。
最初からけっこう気に入っていた。
これから先のつきあい、同じ趣味だし、楽しくなりそうだなと思っていた。
つきあって1週間。
彼女の家からの帰宅途中。
駅から出ると正面に千香がいた。
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