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「おまえが無防備だからだろっ。ナンパについていくなっ」
「なんで隆太が言うの?」
「ムカつくから」
それ以外に理由はない。
かわいさ余って憎さ百倍というのはこういうことだろうか。
今もその顔はかわいいと思う。
かわいいが憎たらしい。
「…私、隆太のこと振ったよ」
千香は俺がどんなにムカついているのか、わかっているのかいないのか。
更に俺の機嫌を悪くするようなことを言ってくれる。
あぁ、フラれたよ。
何度も何度もおまえにフラれたのは俺だよ。
それでも諦め悪く惚れていたのは俺のほうだ。
思い出させるなっ。
「で?おまえは俺を振って、山瀬とつきあうつもりかと思えば、山瀬も振って?今は?」
俺はできるだけ落ち着いて会話になるように聞いてやる。
「彼氏いない。だから別にナンパくらい…」
「俺を振って?ナンパにはついていくって?ついていって何するんだよ?」
認めない。
こいつの全部認めてやりたくない。
俺を振って?
ナンパはよくて?
絶対に認めてやらない。
こいつのせいで俺がモテまくりの高校3年の1年間は潰れたようなもんだ。
こいつがいなければ未だに童貞なんてこともなかったはずだ。
奈緒美に落とされて、引っ張られて、つきあってるうちにかわいいなんて思って、ラブラブに今もつきあっていたかもしれない。
「…遊ぶ」
「こんな時間から遊ぶって、3Pでもして遊ぶのか?」
「そういうのはしないってば」
「おまえがする気なくても、相手がどう出るかなんてわからないだろっ」
「隆太に言われることじゃないっ」
千香は強く言い切った。
わかってる。
俺が言うことじゃない。
でもキレた。
俺は千香の腕を離さないように強く握って、引っ張って歩き出す。
「ちょっと痛いってばっ。どこいくのっ?」
千香は俺に引きずられながら声をかけてくる。
「ラブホ。千香、言ってたよな?法学部合格したらって。合格したからいただく」
俺の童貞、こいつで捨ててやる。
どうせそんな軽いノリで俺以外の男にはくれてやりまくりだろ。
山瀬やナンパ男にはくれてやって、俺にはやらないなんて言わせない。
その約束、果たさせてもらおう。
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