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このままいちゃつこうと、ふれたくてどうしようもなかったその胸にその足にふれると、千香は俺の手を振り払う。
……おまえは俺をどうしたいんだと問いたい。
やっぱりあれはわかっていないからかいなんだろうか。
「……どうしても無理矢理してしまいたくなるのは俺のせいじゃないと思う」
「私、なんにもしてない。…彼女は?いないの?いるの?」
千香は俺を振り返る。
俺の中に今頃になって、あのドジっこな彼女の姿が浮かぶ。
俺がこんな浮気したって知ったら泣くだろうか。
俺がつきあってと願った子なのに、俺が裏切ってる。
「……いる」
俺は隠すことなく千香に答える。
二股をする気持ちってこんなのかな?
でも…、今の俺は目の前しか見えてない。
「彼女とすれば?何回でも何十回でも」
「……嫉妬してくれたっていいだろ」
甘えたことを言ってみたら千香は怒った。
「どうして嫉妬しなきゃいけないの?私は今日、1年ぶりに会っただけ。つきあってもいない。何を嫉妬するの?」
そのとおりとしか言えないことを言いやがる。
おまえにフラれてるのは俺で、俺に彼女がいてもおまえが嫉妬することはないだろう。
…痛い。
また泣きそう。
「……正論で責めんなよ。したかった。千香と。ずっと」
「1年ぶりに会って、ずっと?下手な嘘はつかないで。私のこと忘れていたときもあるでしょ?彼女いるのに、そんなの口説き文句にもならない。
はっきり言えば?ただの性欲処理。私が憎いから無理矢理しただけ」
そのとおりだけどっ。
それだけじゃないっ。
俺はそれ以上千香に言い負かされないように、千香の口を手のひらで押さえる。
そのとおりだと千香に言うのは悔しい。
別の俺の気持ちも見てもらいたい。
性欲処理だけならこんなにうれしいと思ったりしない。
でも伝わらない。
どう言っても伝わりそうにない。
俺には彼女がいるから。
これは浮気にしかならないから。
「何を言っても伝わらないのはわかった。はっきり言う。俺はおまえをずっと犯していたい。余計なことを何も言えないくらい、ずっと喘がせていたい。今の俺はおまえしか見えていない。俺の心を弄ぶおまえしか見えない」
俺はまっすぐに千香の目を見て、俺の下心と今のおまえの言葉を止めたいのと、おまえしか見えないっていうものをぶつけてやる。
もちろんそんなもので千香が俺に落とされてくれることもない。
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