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俺を思いきり反感の持った目で千香は見てくる。
千香は落ちない。
俺がどんなに口説いても。
強姦なんてしたくもないのに、欲しいと思う女は強姦しないと手に入らない。
俺がどんなに甘いつきあいを望んでみたって、俺は千香に受け入れてもらえない。
高校3年の1年間でよーく思い知ってるのに、また繰り返してる。
千香のその目は馬鹿にするなと俺を睨む。
何も伝わらない。
俺がどんなに惚れたのかも。
俺がどんなにおまえが欲しいって思っていたのかも。
「欠片くらい伝われよっ。俺はずっとおまえに惚れてんだよっ。おまえだから、放っておけなくて、おまえだから、…どんなに無理矢理でも俺の腕の中に置いておきたい。おまえの翼、全部むしって飛べなくしてしまいたい」
俺は千香の背中を強く抱きしめて、その肩で堪えきれなくて泣いた。
かっこ悪い。
千香といると俺はひたすらかっこ悪い男にしかなれない。
おまえが男前なのはよくわかってるから、たまには俺にも男らしくかっこよく決めさせて欲しい。
惚れてるのは俺ばかり。
千香は俺が泣き止むまでおとなしく俺の腕の中。
このかわいい小鳥は明日には俺の知らない誰かの腕の中に飛んでいくのだろう。
今日だけ。
この時間だけ。
俺のもの?
…でもないか。
俺は千香を抱きしめたまま、ぱたりとベッドに倒れ込む。
千香も俺と一緒に倒れて、黙って俺を見る。
とりあえずその正論吐く口は止めることができたらしい。
千香の顔を覚えていられるように、その顔を手で撫で回す。
千香は俺の手のひらにキスをくれて、目を開けて俺を見る。
明日にはさよなら。
また俺は千香のいない生活に戻る。
軽くつきあう恋愛は楽しいけれど、ここにあるものを思い出したら虚しくなる。
本気の恋愛、探そうか。
でも千香以上に誰かに惚れる俺がいるとは思えない。
そんなことをぐだぐだ考えていたら、千香は俺の頭に手を当てて、俺の唇にキスをくれる。
…千香がわからない。
軽くふれた柔らかい唇。
一度離れて、もう一度唇を擦りつけるようなキス。
…でも好き。
キスだけで浮いてしまう俺がいるのが悲しい。
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