Breezy

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「いかない。昨日と同じ服だし着替えたいし」 「じゃあ今度?メアドかえたよな?教えて」 俺は千香から新しいメアドを教えてもらう。 いかないとは言われたけど、進行方向は俺の家。 逃がしてやらない。 千香とのデートを楽しみながら、また今日も明日も明後日もデートしたいと考える。 答えはないけど。 もう俺の彼女。 「隆太」 そんな声をかけられて、そっちを見るとドジっこ彼女が俺に笑って手を振っていた。 もうそこは俺の家。 俺を待っていたかと思われる。 内容は見ていないけど、千香の写メを撮るときにメールがきていたのは知っていた。 千香は俺と繋いでいた手を離す。 …言わないと。 別れる…って。 千香の前で言わないと。 「隆太、昨日なにしてたの?メールしたのに。…あ、こんにちは」 彼女は千香にも愛想よく笑って挨拶。 浮気してごめんって謝るのは違う。 だからって彼女が俺に何かしたわけでもない。 俺がかわいいと思って、つきあってと願った。 いろんなことを考えると言葉を言い出せなかった。 「こんにちは。…じゃあ、帰るね」 千香は逃げるように俺から離れようとして、俺はその腕を掴む。 …言わないと。 「ごめん。俺、もうつきあえない。見ての通り何度も振られてるけど、こいつのこと諦めきれていない」 それを言うと千香は俺が掴んだ手を振り払おうともがいてくれる。 「……隆太、冗談やめて。隆太んちいこ?なんにも聞かなかったことにするから」 彼女は落ち着いて言うと、俺の腕を掴んできた。 俺には笑顔で千香には睨みを。 「手を離して。隆太を振りまくりの私がそんなに憎い?女同士の争いが見たい?そういうつもりないなら、片付けてからにしたほうがよかったんじゃない?」 また正論。 俺は千香に言える言葉もないまま、千香の腕を離した。 千香は俺に背を向けて歩いていって、俺はまたフラれたことに沈む。 「……あれ?隆太、本当にフラれた?取り合うのかと思ったのに」 彼女は千香の背中を見てそういうつもりはなかったという顔を見せる。 「だからフラれてるけど俺が諦められてないって言っただろっ」 俺は自分が情けなくなりながら言ってやる。
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