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「…ごめん。隆太の邪魔するつもりはなかったよ。ただ昨日作っていたの夜のうちに完成したから見て欲しくてきただけ。
さっきの子…、かわいいし。私、ブスだしデブだし…、フラれるのわかってるけど。
ねぇ、隆太。合言葉忘れた?別れたいなら言ってくれたらいいって言ったよ?私に隆太を振らせてよ。そしたら今すぐ…彼女追いかけていいから。ごめんね」
俺が悪いのに。
この彼女はなんでそんなこと言ってくれるのか。
もっと気を強くもって、俺と別れたくないって言ってしまえばいいのに。
…俺がすごく我が儘でかっこ悪い。
「……そんなの言えない。思ってもいないこと言えない」
「馬鹿。まだ見えてるんだから早くっ」
そんなの言われて言えるわけない。
おまえは何も悪くない。
俺が自分勝手なだけ。
「……もういいよっ。ほら、さっさといけっ」
彼女は俺の背中を押して、俺は千香の背中を見て、それを追いかけるのをやめて彼女を振り返る。
彼女は俺を涙を堪えまくった顔で見上げる。
俺はその顔にふれて、その目の下を拭う。
彼女の目からぽろぽろ涙は溢れる。
声をあげないように堪えて泣きまくる。
俺の手が彼女の涙で濡れまくる。
「…かわいいよ、おまえは」
「……違う。合言葉違うよ…」
「絶対に言ってやらない」
「フラれてよっ。別れたいんでしょっ?別れてやらないよっ?」
「……いいよ。二股にしようか。どうせあっちはメールしても返事こないし」
「メールしてから言ってよっ」
「しなくてもわかってるんだよ。……俺を慰めてくれる?」
「いや」
かわいげなくいやと言うのに、鼻をすすりまくって泣き止む。
俺は彼女の顔中手のひらで拭いまくって、千香にフラれた傷を頭に頭を押し当てて癒してもらう。
千香にメールした。
別れたと告げた。
会いたいと告げた。
返事はなかった。
別れてやらないと言った彼女は俺を抱きしめてごめんと言いまくる。
俺が悪いのに。
彼女が持ってきたワイヤークラフトは彼女が落として歪んでいて、俺はそれを直してやる。
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