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ワイヤークラフトを完成させてメールしても、ドジっこ彼女からの返信はなく。
千香もメールを何回しても返信なく。
二股の上手なやり方でも山瀬に教わりたくなった。
千香の返信を待ってるだけの3ヶ月。
夏になって陽も長くなって、俺は遊びに出る。
千香も恋しいが、ドジっこ彼女、美優も恋しい。
千香をまっすぐ追いかけられなかったくらい、別れると決めても振り返ってしまった子。
美優を探してクラブにいってみる。
いなくて。
美優の連れは見つけて美優のことを聞いてみた。
「全然遊んでないんじゃないかな?家にいけばだいたいいる」
なんて言われて、俺は車で美優の家にいってみた。
手土産にワイヤークラフト持って。
これが俺の家にあるから気になるということにして。
美優の家の近辺は車を停めるところが遠い。
車をおいて美優の部屋のインターホンを鳴らすと、美優はパイナップルみたいな髪型で黒ブチ眼鏡かけて、Tシャツに短パンで玄関先に出てきて、お洒落もなにもしていない素の美優に俺は何も言えずに眺めて。
美優は俺の顔を見上げると何も言わずに扉を閉めて鍵までかけやがった。
「ちょっ、待て、こらっ」
俺は扉を叩いてやる。
「帰れっ!別れた男と会いたくなんかないっ」
扉のすぐ向こうからそんな声が聞こえる。
「おまえが振ってないなら別れてないんだろっ?」
言ってみても無言。
俺は溜め息をついて、玄関先に屈んで一服。
またしばらくしたらインターホン鳴らしてやるつもりで間をあける。
一服を終えて、さてと立ち上がったところで、背後から扉が俺にぶつかってきた。
振り返ると眼鏡はずして髪もおろして着替えた美優が俺を睨むように見ていた。
「……さっきのもう一回。眼鏡でパイナップルヘア。Tシャツ短パン」
「部屋着なんて忘れてよっ」
「もう一回」
俺はしつこく言ってやって、美優は俺に虐められたように見られたくなかったと凹みまくる。
俺はその隙に美優の部屋に上がり込む。
造形製作していたらしい。
部屋の中にはビニールシートが敷かれ、粘土の塊みたいなのがある。
作っていたところ、踏み潰した感溢れている。
「…隆太、帰れ?」
俺の背後、少し優しげに美優は声をかけてくる。
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