(Body and soul)

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俺は空調のきいた部屋、スペースとしてそこしかなかったベッドに座って涼む。 「…何しにきたのっ?」 俺は持っていた袋を美優に差し出す。 俺にはかわいすぎる、美優の袋。 美優はそれを受け取って、中を見る。 「…別に提出するものでもないし、もういらない」 「……おまえとつきあっていたのに浮気して悪かった」 俺はずっと言えなかったそれを言って、美優は袋を机の上において無言。 「…ごめん」 「……優しいからいや」 「優しくない」 「……かっこいいからいや」 「かっこ悪いことばっかだよ」 「……許す。これでいい?」 「もう一回俺の彼女?」 「……隆太、あのかわいい彼女にかまってもらえないからって、私にかまってもらおうとしないのっ」 図星かもしれない。 俺だって淋しくなって女欲しくなる。 美優が俺と別れないって言ってくれたそれを求めてる。 他の女でもいいとは言える。 でもそうそう出会いもない。 「…セフレでいかがでしょう?」 「なんの売り込み?…本命だけ待ってなよ。大丈夫だって。隆太、いい人だからそのうち振り返ってくれるよ」 俺に自信持てと言ってくれるそういうのが好きかもしれない。 甘えられるの好きだけど、甘えたいときもある。 誰にでも甘えられるってもんでもない。 「パイナップルヘア、もう一回」 「……だから忘れてよーっ」 俺と美優の会話は噛み合っているのか、いないのか。 俺は美優にかまってもらっている。 俺はしばらくここにいるから造形の続きをどうぞとすると、美優は俺を持て余しながらも汚れてもいいTシャツ短パンに着替えて、胡座をかいて粘土を捏ねなおす。 短い短パンの足に目がいく俺は女を知って飢えている。 「私がフラれるのはわかっていたことだし、隆太の恋愛の邪魔をしちゃったことが嫌なの」 「…千香に会わなかったら振ってない。おまえ、かわいいって言ってるだろ。作品ぶっ潰すドジっこなところもかわいい」 「隆太が突然くるからじゃないっ」 美優はばんばん音をたてて粘土を投げまくる。 階下に迷惑だろう。 でもそういうのも嫌いじゃない。 そのうち美優はコンタクトしていないらしく、あの眼鏡をかけて。 俺がその髪をパイナップルヘアにしてやる。
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