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千香じゃない、新しい恋愛をしたいなら美優はやめたほうがいい。
じゅうぶんによくわかっているけど、どんなに他の誰かにつきあおうと言われても、つきあいたいと思わなくて。
思わないのは俺のこと何も知らないのに、なんでつきあおうなんて思うんだ?なんて、自分のことを話そうともしないで思って。
話したらどうせ美優みたいにつきあいたくないって思うんだろなんて思って。
自分のことを話したくなるほど俺が興味を持っているわけでもなくて。
体だけのつきあいならいいかと思ってみても、美優を上手く口説けなくなった自分を思い返して。
結局、今の俺は美優がいいらしい。
そこが基準になってしまっている。
やめたほうがいいと思っても、自分を操ることもできない。
1つ年上のドジっこ。
鈍感で泣き虫で騒がしい。
見た目は千香と比べても見劣りしないくらいかわいいのに、自分をブスだという。
背は155くらいで体型はガリガリではないけどデブともぽっちゃりとも思えない普通。
千香より胸大きめにも思えるから少しぽっちゃりしているのかもしれない。
見た目かわいいのも好きだけど、それ以上のものがなかったら美優がコウと別れるのを待ったりしてなかった。
友達にならなってあげると美優が言ったのを盾に、バイトも休みの日、俺は美優にかまってもらいにその家にいく。
俺の家と同じような小さなワンルーム。
家に上がり込んで何をするでもなく、美優が物を作っているのをベッドに転がって眺める。
スペースとしてそこしかない。
そのうち眠くなってそのまま寝て、起きたら美優が作ってくれた飯を食べて。
また居座る。
暇になると美優と一緒に作ったワイヤークラフトのミニチュアを作ってみたりする。
ハート型のオブジェ。
「隆太、もうお風呂入って寝るから帰って?」
物作りをやめて片付けた美優がそんな声をかけてくる。
「いや。一緒に風呂入って寝る」
俺は答えながらハートを作る。
「……何がどうなってこうなったの?」
「俺、諦め悪いよ?」
俺は完成したハートをぽいっと美優に投げて、美優はそれを受け取って悩む。
俺の中の一番はまだ千香かもしれない。
二番は美優かもしれない。
一番は行方不明の不在だから二番が一番。
そのまま一番になってくれればいい。
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