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「…一人でいってくる…」
俺が何も答えずに愛想笑いで返すと、しょぼんとなってミクは一人で歩いていった。
「…コウも。彼女なんだからちゃんとかまってあげなよ」
美優はミクがいなくなると俺から離れてコウに声をかけていく。
…美優連れてミクについていくほうを選べばよかった。
「踊るのいやなだけだって。遊びたいって言うから、毎日のように遊んでる。…で、美優、隆太とつきあったのか?」
「友達」
俺より先に美優は答えて、俺は煙草に火をつけて溜め息のように煙を吐く。
「隆太をとられたくない彼女のように見えたけど?」
「黙れ、コウ。元カノに冷たいコウのくせにかまってくんな」
「おまえが声かけてきたんだろっ」
「コウがかまってあげていないからじゃない」
「だからかまってるっつぅのっ。ビリヤードしよって言うなら一緒にやってる。俺だってやりたくないことあるんだよっ」
「バイクの後ろに人を乗せたがらないとか?…そんな簡単に落ちないのに」
「俺の単車を少しだけといって乗ったら一人でどこかにいくやつとかな」
「コウが乗せてくれなかったからじゃない。ちゃんと乗れたから大丈夫」
「無免許で走り回るなよっ」
コウは美優にのせられるように話す。
たった1ヶ月。
されど1ヶ月。
俺より元カレなコウが気に入らない。
美優もコウのことをわかっているのが気に入らない。
「なんで別れたんだよ?」
俺は二人に聞いてみた。
コウは黙って美優を見る。
美優が振ったから美優しか答えはないのかもしれない。
「…私がつきあってもらっただけ。コウとつきあいたい子なんていくらでもいるでしょ」
なにか千香を思わせる。
そんなの理由にならない。
「他の理由は?」
俺は更に聞いてやる。
「ないよ。最初から1ヶ月だけって決めてた。コウは私につきあわせただけ。隆太がそれで他の子とつきあうかなって。他のかわりになる子探すかなって」
それは俺にとってもコウにとっても理由にならない理由。
「…もっとかわいがってやったのに」
「…ね?こんなふうに隆太にかまわれていたらコウとつきあった意味なかったよね。…1年くらいつきあえばよかったね。ごめんね。ありがとう」
美優はコウを見て、コウは不満そうに美優から目を逸らす。
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