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「…ごめん。さわらないから」
晃佑の言葉に私は頭を横に振る。
違う。
私は手を晃佑にのばして。
晃佑は私の背中を抱きしめてくれて、私は震えながら晃佑の体にしがみつく。
自分が本当に嫌になってくる。
泣いてしまいながら、ひたすら晃佑にしがみついていた。
晃佑はベッドに座って、私の背中を片腕で抱いて、私の短い髪を撫でる。
あやされている感じがする。
誰に対してもこうなのだと思うと寂しい。
ねぇ?私、ずっと変わってないかも。
私だけって晃佑に思われたいのが、いつも一番にあるかもしれない。
つきあっていなくても。
いつもいつも、そればかり思ってる気がする。
こんな私なのに。
「…寒くて鼻水出そう。服着るか布団に入るかしたい」
晃佑はぶるっと震えると、あやすのをやめて私を湯タンポのように抱きしめる。
確かに晃佑は裸のまま。
暖房を切ってしまったから室温も下がってる。
ベッドの布団と毛布を晃佑の肩にかけて、私はその体に寄りかかったまま離れてやらない。
「……一緒に寝る?」
頷くと、ベッドに転がって転がされて。
私は晃佑の腕を枕にその胸に額をあてる。
ドキドキしてる晃佑の鼓動が聞こえた。
「……したい?」
「……答えづらいこと聞くな。…せめて裸にして肌にふれたい。しないけど。おまえ震えて泣くし。ついでにそこまでしたら、したくなるからしない」
「…欲求不満にならない?……私がここにいると彼女もつくれないよ?」
「狙ってる女もいないし」
「常に誰かに狙われてるくせに」
「…嫉妬?」
私の言い方は不満げだったようだ。
そんなふうに聞かれて悔しくなる。
その顔を見上げると、目を閉じて眠ろうとしてる態勢。
口許はちょっと笑って、どこかうれしそうで。
妬かせるのが好きって厄介だと思う。
「…晃佑は?私にふれた男に嫉妬する?」
「……ふれたというより犯された、だろ?…殴り殺すかと思った。おまえを殴ったあの女も。……髪、短くても気持ちいい」
晃佑は私の髪に顔を埋める。
殴ってくれたらしい。
誰かが殴られているのに、私を大切に思ってくれるその気持ちを喜ぶのはおかしいかな?
うれしくて泣きそうになって、晃佑の胸に擦り寄る。
他の子には見せない態度であればいいのにと思う。
ねぇ?私のこと、好き?
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