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「…好き?私のこと」
美優は更に聞く。
「…好き」
俺は少し拗ねたように答えてしまう。
また俺が愛するばかり。
好きって言葉が軽く思えるくらい、俺は美優が好き。
これって愛?だよな、やっぱり。
キザったらしいけど、その言葉のほうがしっくりくる。
美優は…どうせ俺のことは友達だろうけど。
なんて思っていたのに、美優はグラスをおくと後ろから俺を抱きしめてきた。
「もうどこにもいかない?」
「いかない。美優がいるなら他の女はいらない」
「…なに?それ。大げさ」
美優は小さく笑う。
その声はどこか淋しくも聞こえて、俺は美優の腕を少しほどいて振り返る。
美優は俺の顔を見て、笑顔を見せる。
笑ってるけど、やっぱりどこか泣いたような笑顔。
「…本当にどこにもいかない」
「……うん。ありがとう。デートしよっか?」
目の端に美優は涙を滲ませて、俺はその顔を包むように手のひらを当てる。
「ちゃんと見てっ。俺はここにいるだろっ?セックスしたら終わりなんてやめろよ?そんなの望んでないからな?」
「……何が欲しいの?」
「美優が欲しい。心も体も全部。俺のすべてあげる」
「……馬鹿。心は1つしかないよ。隆太の心、どこにおいてきているかわかってる?」
また千香のことを言われてる。
「美優はっ?おまえの心、どこにあるんだよっ」
美優は俺の胸にふれて、その顔をあげて俺を見る。
「ここに取られちゃった。返して」
美優の瞳から涙が溢れる。
「俺のこと…好き?」
「……人を好きになるって痛いね。苦しい、つらい。隆太の言ったこと、よくわかる」
美優はぼろぼろ泣いて、俺は手のひらでその涙を拭う。
拭っても拭っても溢れる。
「苦しくないってっ。俺、ここにいるっ。美優のこと好きだって言ってんだろっ」
「…2番目でしょ?隆太の1番が誰か知ってるよ、私」
俺の胸が痛む。
どこまでいっても取り返せない。
美優を最初に振ったのは俺だった。
「…うれしいのに痛いの。壊れそうなくらい痛いの。またセックスしたいって隆太が言っても、まったく言わなくても、どっちもいや。もう友達もできない。
…私の心、返してくれなきゃできない。もうかまってあげられない」
美優は泣きまくって、俺にしがみつくように抱きついてくる。
俺の目にも涙が浮く。
そんなつもりはなかったし、ただ欲しかった。
それだけなのに。
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